科学技術史は、世界史の文化史の中でも人名と発明品の組み合わせが大量に出てくる分野です。紙、羅針盤、活版印刷、蒸気機関、電話、人工衛星と、時代も地域もばらばらに登場するため、一覧表を丸暗記しようとして挫折する人も少なくありません。
入試では「誰が何を発明したか」に加えて、「その技術が社会をどう変えたか」という因果がよく問われます。活版印刷が宗教改革を後押ししたこと、紡績機と織機の発明が交互に進んだこと、人工衛星の打ち上げが米ソの競争を激しくしたことなどは、正誤問題でも論述問題でも定番のテーマです。
この記事では、古代から20世紀までの科学技術の流れを年表でつかんだうえで、発明・発見が政治や経済、宗教に与えた影響を時代ごとに整理します。文化史の通史をひととおり学んだあとの復習に使ってください。なお、医学・細菌学は「感染症の歴史」で詳しく扱うため、ここでは名前を挙げる程度にとどめます。

最後にこの記事の内容をまとめた確認プリントもあります!最後まで読み、プリントで復習してこの範囲を完璧にしましょう!
| この記事で分かること | 該当する節 |
|---|---|
| 古代から20世紀までの科学技術の流れ | まず全体像 |
| 発明・発見が社会や世界をどう変えたか | 時代ごとに詳しく見る |
| 中国の三大技術とルネサンスの三大発明の違い | 比べて覚える |
| 人物と発明の組み合わせで誤りやすい点 | 入試で狙われるポイント |
| 論述で使える要点と用語 | 論述で使える要点 |
まず全体像:科学技術の流れを一枚でつかむ
科学技術の歴史は、知識や技術が地域をこえて受け渡されていく歴史でもあります。中国で生まれた紙や羅針盤はイスラーム世界やヨーロッパへ伝わり、古代ギリシアの学問はイスラーム世界で翻訳・研究されたあと、ヨーロッパに戻ってきました。受け取った側で改良が加えられ、それが新しい社会の変化を生むという連鎖がくり返されています。
下の年表では、社会を大きく変えた発明・発見を中心に並べています。まずは「ポイント」の列を読み、技術がどの地域からどの地域へ受け渡されていったかを意識してください。


| 時代 | 年号 | できごと | ポイント |
|---|---|---|---|
| 後漢 | 105年 | 蔡倫が紙を和帝に献上 | 製紙技術を改良し、紙が広く使われるきっかけに |
| 唐 | 751年 | タラス河畔の戦い | 捕虜の紙すき工から製紙法が西へ伝わったとされる |
| アッバース朝 | 9世紀 | 知恵の館での翻訳 | ギリシア語の学術書をアラビア語に訳す |
| 北宋 | 11世紀 | 畢昇の活字、羅針盤・火薬の利用 | 中国で三つの技術が実用の段階に入る |
| 中世ヨーロッパ | 12世紀 | アラビア語文献のラテン語訳 | 12世紀ルネサンス |
| ルネサンス | 15世紀半ば | グーテンベルクの活版印刷術 | 書物の大量生産が可能に |
| ルネサンス | 1543年 | コペルニクスの地動説の主著 | 天動説への挑戦 |
| 科学革命 | 1687年 | ニュートン『プリンキピア』 | 万有引力の法則 |
| 産業革命 | 1733年 | ジョン=ケイの飛び杼 | 綿工業の技術革新の出発点 |
| 産業革命 | 1769年 | ワットの蒸気機関の特許 | ニューコメンの機関を改良 |
| 交通革命 | 1807年・1825年 | フルトンの蒸気船、スティーヴンソンの鉄道 | 人と物の移動が速く大量に |
| 19世紀 | 1859年 | ダーウィン『種の起源』 | 進化論 |
| 第2次産業革命 | 1876年・1879年 | ベルの電話、エディソンの白熱電球 | 電気と通信の時代へ |
| 20世紀 | 1903年・1905年 | ライト兄弟の動力飛行、特殊相対性理論 | 空の交通と新しい物理学 |
| 第二次世界大戦 | 1945年 | 原子爆弾の投下 | 科学が国家の戦争に組み込まれる |
| 冷戦 | 1957年・1961年・1969年 | スプートニク1号、ガガーリン、アポロ11号 | 米ソの宇宙開発競争 |
時代ごとに詳しく見る
ここからは、時代ごとに主な発明・発見と、それが社会に与えた影響を見ていきます。どの時代にも、「なぜその技術が求められたのか」と「その技術が何を変えたのか」の二つの問いを立てながら読むと、人名と発明の組み合わせが記憶に残りやすくなります。
古代:オリエントの暦とギリシア・ヘレニズムの自然科学
古代オリエントでは、農業と結びついて暦と天文学が発達しました。エジプトでは、ナイル川が毎年決まった時期にあふれることから、早くから太陽の動きにもとづく暦(太陽暦)が使われていました。この暦は、のちにローマのカエサルが定めたユリウス暦につながります。メソポタミアでは、月の満ち欠けにもとづく暦(太陰暦)が作られ、60を単位に数える六十進法が使われました。
古代ギリシアでは、自然を神話ではなく理性で説明しようとする自然哲学が生まれました。ミレトスのタレスは万物の根源を水と考え、ヒッポクラテスは呪術にたよらず観察を重んじる医学を築いて「医学の父」と呼ばれます。アリストテレスは、自然学や論理学、政治学などにわたる大きな学問の体系を作りあげました。
アレクサンドロス大王の遠征後のヘレニズム時代には、エジプトのアレクサンドリアに王室の研究所であるムセイオンが置かれ、数学や天文学の研究の中心になりました。エウクレイデス(ユークリッド)は幾何学を体系化し、シラクサのアルキメデスはてこや重心の原理を研究し、面積や体積の求め方でも業績を残しました。アリスタルコスは、太陽を中心に地球が回るという説をすでに唱えていました。一方、2世紀にアレクサンドリアで活躍したプトレマイオスは、地球を中心とする天動説を『アルマゲスト』にまとめ、この説がその後長く受け入れられることになります。
| 人物・場所 | 分野 | 業績 |
|---|---|---|
| タレス | 自然哲学 | 万物の根源は水と考えた |
| ヒッポクラテス | 医学 | 観察と経験を重んじ「医学の父」と呼ばれる |
| アリストテレス | 哲学・自然学 | 諸学問を体系化した |
| エウクレイデス | 数学 | 幾何学を体系化した |
| アルキメデス | 数学・物理学 | てこ・重心の原理の研究 |
| アリスタルコス | 天文学 | 太陽中心説を唱えた |
| プトレマイオス | 天文学・地理学 | 天動説を『アルマゲスト』にまとめた |
中国:製紙法と宋代の印刷術・羅針盤・火薬
中国では、早くから紙が作られていました。後漢の宦官の蔡倫は、樹皮や麻くず、ぼろ布、魚網などを原料に紙を作り、105年に和帝に献上しました。この紙は蔡侯紙と呼ばれます。かつて蔡倫は紙の発明者とされてきましたが、前漢の時代の紙が出土したことから、現在では製紙の技術を改良し、紙を広める役割を果たした人物と考えられています。それまで文字を書く材料だった竹簡や木簡はかさばり、絹は高価だったため、蔡侯紙はそれらに代わる書写の材料として広く使われるようになりました。
紙の製法が西へ伝わるきっかけになったのが、751年のタラス河畔の戦いです。中央アジアで唐の軍がアッバース朝の軍に大敗し、このとき捕虜になった紙すき工から製紙法がイスラーム世界に伝わったとされます。その後、サマルカンドやバグダードで紙が作られるようになり、製紙法は12世紀にはヨーロッパへ伝わりました。
宋の時代には、のちにヨーロッパを変える三つの技術がそろって実用の段階に入りました。宋代は木版印刷が盛んな時代で、北宋の慶暦年間(1041〜48年)には、畢昇(ひっしょう)が粘土を固めて焼いた膠泥活字を発明しました。ただし、当時は木版印刷のほうが盛んで、活字印刷はあまり広まりませんでした。羅針盤は、おそくとも11世紀末には中国の船に積まれて航海に使われていました。火薬は唐代ごろに生まれたと考えられ、北宋が1044年にまとめた兵法書『武経総要』には、軍事用の火薬の配合が記されています。


| 技術 | 中国での発達 | のちの影響 |
|---|---|---|
| 紙 | 105年、蔡倫が改良した紙を献上 | タラス河畔の戦いを機に西へ伝わったとされる |
| 印刷術 | 宋代に木版印刷が盛ん。11世紀に畢昇の膠泥活字 | ヨーロッパでは金属活字の活版印刷が実用化された |
| 羅針盤 | おそくとも11世紀末に航海で利用 | ヨーロッパで改良され、遠洋航海を支えた |
| 火薬 | 唐代ごろに生まれ、宋代に軍事で利用 | ヨーロッパで火器に使われ、戦術を変えた |
イスラーム世界:翻訳と研究、ヨーロッパへの伝播
アッバース朝の都バグダードの知恵の館(バイト=アルヒクマ)では、第7代カリフのマームーン(在位813〜833年)のもとで、ギリシア語で書かれた哲学や医学、数学などの書物がアラビア語に翻訳されました。この翻訳事業によって、古代ギリシアの学問はイスラーム世界で受け継がれ、さらに発展していきます。紙が羊皮紙やパピルスに代わって広まったことも、書物の制作と学問の発展を支えました。
数学では、インドで生まれたゼロの考え方と数字が取り入れられました。マームーンの時代にバグダードで活躍したフワーリズミーは、インドの数字を導入し、代数学の基礎を築きました。ヨーロッパで「アラビア数字」と呼ばれる数字は、もとはインドで考案されたものです。医学では、イブン=シーナーが『医学典範』を著し、この書はラテン語に訳されて中世ヨーロッパで医学の権威とされました。イベリア半島のコルドバに生まれたイブン=ルシュドは、アリストテレスの著作の注釈で知られます。
12世紀になると、イベリア半島のトレドなどで、アラビア語の学術書がラテン語に盛んに翻訳されました。アリストテレスの哲学やイスラーム世界の科学が西ヨーロッパに流れこみ、学問が活気づいたこの動きを12世紀ルネサンスと呼びます。ギリシアの学問は、イスラーム世界を経由することで、ヨーロッパに戻ってきたのです。


| 人物 | 分野 | 主な業績 |
|---|---|---|
| フワーリズミー | 数学・天文学 | インドの数字を導入し、代数学の基礎を築く |
| イブン=シーナー | 医学・哲学 | 『医学典範』。ラテン語訳が中世ヨーロッパの権威に |
| イブン=ルシュド | 哲学 | アリストテレスの著作の注釈 |
ルネサンス:活版印刷と地動説
15世紀半ば、ドイツのマインツで、グーテンベルクが金属の活字を使う活版印刷術を実用化しました。手で書き写していた書物を、同じ内容で大量に、しかも安く作れるようになったのです。この技術はヨーロッパ各地に急速に広がりました。
活版印刷は、宗教改革と深く結びつきました。1517年にルターが九十五か条の論題を発表すると、彼の主張は印刷された冊子によって広く伝わり、ルターがドイツ語に訳した聖書も多くの人が手にできるようになりました。信仰のよりどころを聖書に置くルターの考え方を広めるうえで、印刷術は大きな力になりました。
中国から伝わった羅針盤と火薬も、ヨーロッパで改良されて社会を変えました。改良された羅針盤は遠洋航海を可能にし、大航海時代を支える航海の道具になりました。火薬は14世紀以降、火砲や小銃に使われるようになり、重い鎧を着た騎士の軍事的な役割を失わせました。火薬・羅針盤・活版印刷は、ルネサンスの三大発明と呼ばれます。


天文学では、ポーランドのコペルニクスが、古代ギリシアのアリスタルコスの説にも触れながら、太陽を中心に地球などの惑星が回るという地動説を唱えました。主著『天球回転論』(『天球の回転について』)が刊行されたのは、彼が亡くなる1543年のことです。地動説は、地球を宇宙の中心とする教会の伝統的な世界観と対立するものでした。


17世紀:科学革命とニュートン
16世紀のコペルニクスから17世紀のニュートンにいたる時期に、観察と実験、数学を重んじる近代科学が成立しました。この大きな変化を科学革命と呼びます。
イタリアのガリレイは、オランダで望遠鏡が作られたことを知ると、1609年にみずから望遠鏡を作って天体を観測しました。月面の凹凸や木星の衛星、太陽の黒点などを発見し、地動説を支持しましたが、1633年に宗教裁判にかけられ、地動説を捨てることを誓わされました。ドイツのケプラーは、惑星が太陽のまわりを円ではなく楕円を描いて回ることなどを示す「ケプラーの法則」を発見しました。イギリスのハーヴェーは、血液が体内を循環することを明らかにしました。
こうした成果を一つにまとめたのが、イギリスのニュートンです。1687年に刊行された『プリンキピア』で、ニュートンは万有引力の法則を示し、地上の物体の運動も惑星の運動も同じ法則で説明できることを明らかにしました。それまで別の世界と考えられていた天上と地上が、一つの法則で結ばれたのです。
| 人物 | 国 | 業績 |
|---|---|---|
| コペルニクス | ポーランド | 地動説を唱える。主著は1543年刊行 |
| ガリレイ | イタリア | 1609年に望遠鏡で天体を観測し、地動説を支持 |
| ケプラー | ドイツ | 惑星の楕円軌道などケプラーの法則 |
| ハーヴェー | イギリス | 血液の循環を明らかにする |
| ニュートン | イギリス | 1687年『プリンキピア』、万有引力の法則 |
18〜19世紀前半:産業革命の技術革新
18世紀のイギリスでは、綿織物の生産で技術革新が連鎖的に起こりました。1733年、ジョン=ケイが飛び杼を発明すると、布を織る速さが上がり、今度は糸が足りなくなります。そこで糸を紡ぐ機械の発明が続きました。1764年ごろのハーグリーヴズのジェニー紡績機、1769年に特許を得たアークライトの水力紡績機、1779年のクロンプトンのミュール紡績機です。糸が大量に出回るようになると、1785年にはカートライトが力織機を発明し、織る工程も機械化されました。


機械を動かす動力として、蒸気機関が改良されました。蒸気機関を最初に実用化したのはニューコメンで、1712年に鉱山の排水に使う機関を完成させました。ワットは、この機関の熱効率の悪さに気づいて改良し、1769年に特許を得ました。さらにピストンの往復運動を回転運動に変える改良を加えたことで、蒸気機関は工場のさまざまな機械の動力に使えるようになりました。ワットは蒸気機関の発明者ではなく、改良者であることに注意しましょう。
蒸気機関は交通も変えました。1807年、アメリカのフルトンは蒸気船クラーモント号でハドソン川の航行に成功しました。イギリスでは、スティーヴンソンが改良した蒸気機関車が、1825年にストックトン・ダーリントン間で客と貨物を運び、1830年にはリヴァプール・マンチェスター間の鉄道が開通しました。原料や製品、人が速く大量に運ばれるようになったこの変化を交通革命と呼びます。


| 年 | 人物 | 発明 | 工程 |
|---|---|---|---|
| 1733年 | ジョン=ケイ | 飛び杼 | 織布 |
| 1764年ごろ | ハーグリーヴズ | ジェニー紡績機 | 紡績 |
| 1769年 | アークライト | 水力紡績機 | 紡績 |
| 1769年 | ワット | 蒸気機関の改良(特許) | 動力 |
| 1779年 | クロンプトン | ミュール紡績機 | 紡績 |
| 1785年 | カートライト | 力織機 | 織布 |
| 1807年 | フルトン | 蒸気船 | 交通 |
| 1825年 | スティーヴンソン | 蒸気機関車による鉄道輸送 | 交通 |
19世紀:進化論・電気・第2次産業革命
生物学では、イギリスのダーウィンが、測量船ビーグル号での航海の観察などをもとに、1859年に『種の起源』を著しました。生物は自然選択によって長い時間をかけて変化してきたという進化論は、神が生物を創造したとする考え方と対立し、思想界にも大きな影響を与えました。
物理学では、イギリスのファラデーが1831年に電磁誘導を発見し、のちの電磁気学の発展の基礎を築きました。通信の分野では、アメリカのモールスが電信機と符号を考案し、1844年にワシントンとボルティモアの間で電信が始まりました。1876年にはベルが電話の特許を得ました。エディソンは1879年に炭素フィラメントを使った白熱電球を作り、1882年には発電と配電の事業を始めて、電気を家庭や街に届ける道を開きました。1895年には、マルコーニが無線通信の装置を発明し、レントゲンがX線を発見しています。
19世紀後半になると、電力や石油を新しい動力源として、鉄鋼や化学などの重化学工業が発達しました。これを第2次産業革命と呼びます。ドイツのダイムラーはガソリン機関を使った自動車の原型を作り、1890年代にはディーゼルが新しい内燃機関を考案しました。第2次産業革命の中心になったのは、イギリスよりもドイツとアメリカでした。重化学工業では巨大な企業が生まれ、独占資本が成長します。原料や市場を求めて列強が海外へ進出する帝国主義の時代は、こうした経済の変化と結びついていました。
| 分野 | 人物 | 業績 |
|---|---|---|
| 生物学 | ダーウィン | 1859年『種の起源』、進化論 |
| 電磁気学 | ファラデー | 1831年、電磁誘導の発見 |
| 通信 | モールス | 電信機と符号。1844年に電信が始まる |
| 通信 | ベル | 1876年、電話の特許 |
| 電気 | エディソン | 1879年、白熱電球。発電・配電の事業 |
| 内燃機関 | ダイムラー、ディーゼル | ガソリン機関の自動車、ディーゼル機関 |
| 化学 | ノーベル | ダイナマイトの発明 |
| 医学 | パストゥール、コッホ | 狂犬病の予防接種、結核菌・コレラ菌の発見 |
20世紀:相対性理論・原子力・宇宙開発・コンピュータ
20世紀の初めには、空を飛ぶ技術と新しい物理学が登場しました。アメリカのライト兄弟は、1903年にノースカロライナ州のキティホークで、エンジンを積んだ飛行機による初めての動力飛行に成功しました。1905年には、アインシュタインが特殊相対性理論を発表し、時間と空間についての考え方を大きく変えました。放射能の研究では、キュリー夫妻がラジウムやポロニウムを発見しています。
第二次世界大戦中、アメリカは原子爆弾を開発するマンハッタン計画を進めました。1945年7月に史上初の核実験が行われ、同年8月6日に広島、8月9日に長崎に原子爆弾が投下されました。原子爆弾は、科学研究が国家の戦争の計画に組み込まれて生まれた兵器でした。
戦後の冷戦の中で、米ソは宇宙開発でも競い合いました。1957年10月4日、ソ連が世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げると、ソ連のロケット技術の高さが示され、西側諸国に衝撃が走りました。アメリカは翌1958年に人工衛星を打ち上げ、宇宙開発を担う機関としてNASAを設立します。1961年にはソ連のガガーリンがボストーク1号で人類初の有人宇宙飛行に成功しました。同じ年、アメリカのケネディ大統領は人間を月に送るアポロ計画を打ち出し、1969年7月にアポロ11号が月面着陸を果たしました。


コンピュータも、軍事や研究と結びついて生まれました。1946年、アメリカのペンシルベニア大学で、約1万8000本の真空管を使った電子計算機ENIACが作られました。現在のインターネットのもとになったのは、1969年にアメリカ国防総省の機関が始めたARPANETというネットワークです。
| 年 | 国 | できごと |
|---|---|---|
| 1945年 | アメリカ | 初の核実験、広島・長崎への原子爆弾の投下 |
| 1946年 | アメリカ | 電子計算機ENIAC |
| 1957年 | ソ連 | 人工衛星スプートニク1号 |
| 1958年 | アメリカ | 人工衛星の打ち上げ、NASAの設立 |
| 1961年 | ソ連 | ガガーリンが人類初の有人宇宙飛行 |
| 1969年 | アメリカ | アポロ11号の月面着陸、ARPANET |
比べて覚える
科学技術史で最も混同しやすいのが、中国で生まれた三つの技術と、ルネサンスの三大発明の関係です。「どこで生まれ、どこで改良され、何を変えたか」の3点で並べると、違いがはっきりします。
| 技術 | 中国(宋代までに) | ヨーロッパ(ルネサンス期) | ヨーロッパで変えたもの |
|---|---|---|---|
| 印刷術 | 木版印刷、畢昇の膠泥活字 | グーテンベルクの金属活字による活版印刷 | 宗教改革(ルターの主張・ドイツ語訳聖書の普及) |
| 羅針盤 | おそくとも11世紀末に航海で利用 | 改良されて遠洋航海に使われる | 大航海時代 |
| 火薬 | 宋代に軍事で利用 | 火砲・小銃に使われる | 戦術の変化と騎士の没落 |
もう一つ、産業革命は「第1次」と「第2次」を対比させることが大切です。動力源、中心となる産業、中心となる国の3点を押さえておきましょう。


| 項目 | 産業革命(第1次) | 第2次産業革命 |
|---|---|---|
| 時期 | 18世紀後半から | 19世紀後半から |
| 動力源 | 石炭と蒸気機関 | 電力と石油 |
| 中心の産業 | 綿工業などの軽工業 | 鉄鋼・化学などの重化学工業 |
| 中心の国 | イギリス | ドイツ・アメリカ |
| 社会への影響 | 工場制度、交通革命 | 巨大企業と独占資本、帝国主義 |
入試で狙われるポイント
正誤問題では、人物と発明、人物と分野の組み合わせをずらした選択肢がよく出されます。左の列のような選択肢が出てきたら、どこがずらされているのかを右の列で確かめ、正しい組み合わせを言えるようにしておきましょう。
| 誤りやすい記述 | 正しい内容 |
|---|---|
| ワットが蒸気機関を発明した | 実用化したのはニューコメン。ワットは改良者 |
| 天動説を唱えたのはコペルニクスである | 天動説はプトレマイオス。コペルニクスは地動説 |
| 太陽中心説はコペルニクスが初めて唱えた | ヘレニズム時代のアリスタルコスがすでに唱えていた |
| イブン=シーナーはアリストテレスの注釈で知られる | イブン=シーナーは『医学典範』。アリストテレスの注釈はイブン=ルシュド |
| アラビア数字はアラビアで考案された | インドで考案され、イスラーム世界を経てヨーロッパへ |
| グーテンベルクは木版印刷を発明した | 金属活字による活版印刷術を実用化した |
| ジェニー紡績機の発明で布を織る速さが上がった | ジェニー紡績機は糸を紡ぐ機械。織る速さを上げたのは飛び杼 |
| 世界初の人工衛星はアメリカが打ち上げた | 1957年、ソ連のスプートニク1号 |
論述で使える要点
論述では、発明の名前を並べるだけでなく、「その技術が社会の何を変えたか」を説明することが求められます。よく問われる2つのテーマについて、要点の例を示します。
例1「中国の技術とヨーロッパの変化」(150字程度):火薬・羅針盤・印刷術は中国で発達し、宋代に実用化が進んだ。これらはヨーロッパに伝わって改良され、ルネサンス期の三大発明となった。火薬は火器に使われて騎士を没落させ、羅針盤は遠洋航海を可能にして大航海時代を支えた。活版印刷はルターの主張やドイツ語訳聖書を広め、宗教改革を後押しした。
例2「イギリス産業革命の技術革新」(130字程度):綿工業では、飛び杼で織布が速くなると糸が不足し、ジェニー紡績機・水力紡績機・ミュール紡績機が生まれ、さらに力織機が発明された。ワットが改良した蒸気機関は工場の動力となり、蒸気船や鉄道による交通革命も進んで、原料と製品の大量輸送が可能になった。
| テーマ | 入れるべき用語 |
|---|---|
| 知識の伝播 | 知恵の館、マームーン、アラビア語訳、トレド、ラテン語訳、12世紀ルネサンス |
| 三大発明の影響 | 宋、畢昇、グーテンベルク、ルター、大航海時代、騎士の没落 |
| 産業革命 | 飛び杼、紡績機、力織機、ニューコメン、ワット、交通革命 |
| 第2次産業革命 | 電力、石油、重化学工業、ドイツ・アメリカ、独占資本、帝国主義 |
| 冷戦と科学 | マンハッタン計画、スプートニク1号、NASA、ガガーリン、アポロ11号 |
確認問題
科学技術史に出てきた人物と用語を、一問一答で確かめましょう。答えは本文で太字や表に出てきた語句ばかりです。答えを見ずに一度通して解き、迷った問題は本文の該当する時代の節に戻って、人物と発明をセットで確かめ直しましょう。
- 1105年に改良した紙を後漢の和帝に献上した宦官は?前漢の紙も出土しており、製紙技術の改良者とされる
- 2751年、捕虜の紙すき工から製紙法が西へ伝わったとされる戦いは?唐がアッバース朝に大敗した
- 3北宋の時代に、膠泥活字を発明した人物は?宋代は木版印刷が盛んだった
- 4マームーンのもとでギリシア語文献のアラビア語訳が進められた、バグダードの施設は?バイト=アルヒクマともいう
- 5インドの数字を導入し、代数学の基礎を築いたイスラーム世界の学者は?アラビア数字のもとはインドで考案された
- 6『医学典範』を著し、中世ヨーロッパの医学に影響を与えた学者は?アリストテレスの注釈はイブン=ルシュド
- 7アラビア語の学術書がラテン語に訳され、西ヨーロッパの学問が活気づいた動きを何という?トレドなどで翻訳が進んだ
- 815世紀半ばにマインツで活版印刷術を実用化した人物は?宗教改革でルターの主張を広める力になった
- 91543年に主著が刊行され、地動説を唱えた天文学者は?天動説はプトレマイオス
- 101609年に望遠鏡で天体を観測し、地動説を支持した人物は?1633年に宗教裁判にかけられた
- 111687年の『プリンキピア』で示された法則は?天上と地上の運動を同じ法則で説明した
- 121733年にジョン=ケイが発明した、布を織る速さを上げた道具は?糸不足をまねき、紡績機の発明が続いた
- 13ニューコメンの機関を改良し、1769年に特許を得た人物は?ワットは蒸気機関の発明者ではなく改良者
- 141859年に『種の起源』を著し、進化論を唱えた人物は?ビーグル号での航海の観察がもとになった
- 151957年にソ連が打ち上げた世界初の人工衛星は?翌年アメリカはNASAを設立した
数日あけてから、もう一度この一覧に戻ってきてください。
ほかの時代の用語も確かめたいときは、世界史一問一答で地域や時代を混ぜて解いてみてください。
世界史 科学技術史の内容をまとめて復習できる解説つきの問題集(PDF・全19問)を用意しました。下のファイルをダウンロードして、印刷して使ってください。
テーマ史の勉強の進め方
世界史の通史では、科学技術の話が各時代の文化史の最後に少しずつ出てくるため、それぞれを別々の暗記項目として覚えがちです。通史をひととおり終えた段階で、この記事のように科学技術だけを抜き出して並べ直すと、「技術が地域をこえて受け渡され、受け取った側で改良されて社会を変える」という一本の流れとして頭に残ります。
| 段階 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | 通史で、各時代の文化史に出てくる発明・発見を一度学ぶ | 世界史が一周したあと |
| 2 | 年表を見ながら、人物と発明の組み合わせを声に出して確認する | 1回10〜15分 |
| 3 | 紡績・織布の機械と、三大発明の比較表を隠して白紙に再現する | 書けなかった欄に印をつける |
| 4 | 論述の要点を見ずに、技術と社会の因果を150字でまとめる | 数日おいて繰り返す |
科学技術の歴史は、東西の交流や宗教の歴史、感染症との戦いとも深くつながっています。関連するテーマ史とあわせて読むと、文化史が政治史・経済史と結びついて見えてきます。
通史とテーマ史をどの順番で進めればいいか、独学で間に合うかの判定方法は、世界史は独学で間に合う?で詳しく解説しています。論述の添削を頼める家庭教師やオンライン塾の選び方もまとめています。
関連するテーマ史・時代別の記事
科学技術の発達は、技術が伝わった道や、学問を支えた宗教・思想と切り離せません。あわせて読むと理解が深まる記事を紹介します。
| 記事 | この記事とのつながり |
|---|---|
| 世界史のテーマ史:東西交流史 | 製紙法・火薬・羅針盤がどの道を通って伝わったかが分かる |
| 世界史のテーマ史:感染症の歴史 | パストゥールやコッホなど医学・細菌学の発展が分かる |
| 世界史のテーマ史:イスラーム史 | 知恵の館を生んだアッバース朝の流れが分かる |
| 世界史のテーマ史:キリスト教史 | 活版印刷と宗教改革、地動説と教会の関係が分かる |
| 世界史のテーマ史:アジアの宗教・思想史 | 宋代の技術が発達した時代の学問の背景が分かる |
| 古代ギリシア | 時代別の記事 |
| 中国史(1) | 時代別の記事 |
| 中国史(2) | 時代別の記事 |
| イスラーム世界 | 時代別の記事 |
| ヨーロッパ史(2) | 時代別の記事 |
| 産業革命 | 時代別の記事 |
| 第二次世界大戦 | 時代別の記事 |
ほかのテーマも、世界史のテーマ史の一覧でまとめて確認できます。
まとめ
科学技術の歴史は、ある地域で生まれた知識や技術が別の地域に伝わり、そこで改良されて社会を大きく変えるという連鎖の歴史です。中国の技術とギリシアの学問はイスラーム世界を経てヨーロッパに届き、ヨーロッパでは印刷術が宗教改革を、羅針盤が大航海時代を、蒸気機関が工業化を後押ししました。20世紀には、科学そのものが国家の戦争や冷戦の競争に組み込まれていきます。
| 段階 | 中心となる技術・発見 | 社会への影響 |
|---|---|---|
| 受け渡しの時代 | 紙・羅針盤・火薬・印刷術(中国)、翻訳と研究(イスラーム世界) | 知識がヨーロッパへ伝わり、12世紀ルネサンスへ |
| 近代科学の誕生 | 活版印刷、地動説、万有引力の法則 | 宗教改革、大航海時代、科学革命 |
| 工業化の時代 | 紡績機・蒸気機関・鉄道、電力・石油 | 工場制度と交通革命、独占資本と帝国主義 |
| 国家と科学の時代 | 原子爆弾、人工衛星、コンピュータ | 第二次世界大戦、冷戦下の宇宙開発競争 |
最初に年表の「ポイント」の列で流れをつかみ、次に比較の表で三大発明と二つの産業革命の違いを確かめ、最後に論述の要点を自分の言葉で書いてみてください。人物と発明に「何を変えたか」を一言添えて言えるようになれば、科学技術史は得点源になります。












コメント/Comment