環境をテーマとする小論文は、理系・文系を問わず出題されます。農学部、環境学部はもちろん、経済学部や法学部でも扱われます。
難しいのは、「環境を守るべきだ」で終わってしまうことです。誰も反対しない主張を書いても、評価されません。
この記事では頻出5テーマの論点・賛否の根拠・使える語彙を整理しました。実際の出題を想定した問題文と、600字の答案例も載せています。

主な勉強場所はどこ?
環境系で問われる傾向

| 見られる点 | 具体的には |
|---|---|
| 対立の理解 | 環境保護と経済活動の緊張を見ているか |
| 負担の配分 | 誰がコストを負うかを考えているか |
| 時間の視点 | 今の世代と将来の世代を区別しているか |
| 実現可能性 | 理想だけで終わっていないか |
最も避けたいのは、「環境を大切にすべきだ」という総論のみで終始してしまうことです。
| 避けたい書き方 | 望ましい書き方 |
|---|---|
| 環境を守るべきだ | 環境保護の負担を誰が負うかが問題である |
| 一人ひとりの意識が大切 | 意識だけでは変わらない構造がある |
| 企業は環境に配慮すべき | 配慮する企業が損をしない仕組みが要る |
環境問題の本質は「誰が負担するか」にあります。ここに踏み込めると、答案の質が変わります。
頻出テーマ1:気候変動

現状
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 気温の上昇 | 平均気温の上昇が続く |
| 災害 | 豪雨や猛暑の頻度が増加 |
| 国際的な枠組み | 削減目標をめぐる交渉 |
| 産業への影響 | 脱炭素に向けた転換の負担 |
主な論点
| 論点 | 対立する見方 |
|---|---|
| 削減の負担 | 先進国が多く負う/新興国の排出も大きい |
| 経済との両立 | 規制が成長を妨げる/新産業が生まれる |
| 世代間の公平 | 将来世代のために今削減/今の生活も守る |
| 個人と社会 | 行動変容が必要/制度で変えるべき |
使える視点
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 排出と被害は一致しない | 排出の少ない国が被害を受ける |
| 意識では変わらない | 選べる選択肢がなければ行動できない |
| 将来世代は議論に参加できない | 今の決定が、決められない人に影響する |
3つ目の「将来世代は議論に参加できない」が最も評価される視点です。「将来世代のために」と言うとき、その世代は今の議論に加われないという不均衡を指摘できます。
頻出テーマ2:再生可能エネルギー

現状
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 導入の拡大 | 太陽光・風力の比率が上昇 |
| コスト | 発電費用は低下したが、送電網の整備が必要 |
| 不安定性 | 天候に左右される |
| 設置をめぐる対立 | 景観や環境への影響 |
主な論点
| 論点 | 対立する見方 |
|---|---|
| 原子力との関係 | 代替になる/安定供給には不足 |
| 設置場所 | 適地に集中/地域の合意が必要 |
| コスト負担 | 電気料金に上乗せ/公費で支える |
| 自給率 | 輸入依存を減らす/設備は輸入に頼る |
使える視点
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 環境保護どうしの対立 | 太陽光発電のために森林を伐採する例 |
| 負担する地域と受益する地域 | 発電地と消費地が離れている |
| コストは誰が払うか | 電気料金への上乗せは低所得層に重い |
頻出テーマ3:プラスチックごみと循環型社会

現状
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 海洋汚染 | プラスチックが海に流出 |
| リサイクル | 分別されても再利用されない例 |
| 代替素材 | 紙や生分解性素材への転換 |
| 輸出入 | 廃棄物の国際的な移動 |
主な論点
| 論点 | 対立する見方 |
|---|---|
| 規制の対象 | 消費者の行動/生産する側の責任 |
| 代替の是非 | 紙に転換/製造時の負荷は増える場合も |
| リサイクル | 再利用を進める/そもそも減らすべき |
| 利便性 | 不便を受け入れる/必要な用途もある |
使える視点
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 象徴的な対策に注意 | レジ袋削減の効果は限定的 |
| 代替が常に良いとは限らない | 製造時の環境負荷を含めて考える |
| 医療など必要な用途もある | 一律の禁止は現実的でない |
1つ目の「象徴的な対策に注意」では書き方に注意が必要です。「レジ袋削減は無意味だ」と断じるのではなく、「象徴としての意味はあるが、それだけでは足りない」という書き方が安全です。
頻出テーマ4:生物多様性

現状
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 種の減少 | 開発や気候変動により生息地が縮小 |
| 外来種 | 在来の生態系への影響 |
| 里山 | 人の手が入らなくなり環境が変化 |
| 農業との関係 | 農薬・単一栽培の影響 |
主な論点
| 論点 | 対立する見方 |
|---|---|
| 保護の理由 | 人間にとって有用/生物自体に価値がある |
| 開発との両立 | 経済活動も必要/取り返しがつかない |
| 外来種の駆除 | 生態系を守る/持ち込んだのは人間 |
| 里山の管理 | 人が関わり続ける/自然に任せる |
使える視点
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 手つかずが良いとは限らない | 里山は人の手で保たれてきた |
| 保護の理由を問う | 役に立つから守るのか |
| 失ってから気づく | 価値が分かる前に消える |
頻出テーマ5:食料と農業

現状
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 自給率 | 多くを輸入に依存 |
| 食品ロス | 食べられる食品の廃棄 |
| 担い手 | 農業従事者の高齢化 |
| 環境負荷 | 輸送・肥料・畜産による排出 |
主な論点
| 論点 | 対立する見方 |
|---|---|
| 自給率 | 高めるべき/貿易で補える |
| 食品ロス | 消費者の意識/流通の仕組み |
| 地産地消 | 輸送の負荷が減る/効率は落ちる |
| 食生活の転換 | 肉の消費を減らす/個人の選択 |
使える視点
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| ロスは末端だけで起きない | 生産・流通の各段階で発生する |
| 地産地消が常に低負荷とは限らない | 栽培条件によっては輸入のほうが低い場合も |
| 選べる人と選べない人 | 価格が高い選択肢は誰でも選べない |

答案例【600字】
問題文
【問題】
脱炭素社会の実現に向けて、各国が温室効果ガスの削減目標を掲げている。日本でも、再生可能エネルギーの導入拡大や、ガソリン車から電気自動車への転換が進められている。
一方で、こうした取り組みには費用がかかる。電気料金の上昇や、新しい製品への買い替えといった形で、家計に負担が生じる場面もある。
脱炭素に向けた取り組みを進めるうえで、何が課題となるか。あなたの考えを600字以内で述べなさい。
答案例
脱炭素に向けた取り組みの課題は、技術や目標そのものではなく、負担の配分にあると私は考える。
問題文にあるように、脱炭素には費用がかかる。電気料金が上がれば、すべての家庭が同じ額を負担することになる。しかし同じ千円でも、所得によって重みは異なる。収入の少ない世帯ほど、光熱費が家計に占める割合は高い。負担は一律に見えて、実際には不均等である。
電気自動車への転換も同様である。買い替えられる人は排出を減らせるが、買い替えられない人は古い車に乗り続ける。結果として、環境に配慮した行動が、経済的な余裕のある層に限られてしまう。環境対策が新たな格差を生む可能性がある。
この点を踏まえると、「一人ひとりが意識を高めるべきだ」という主張には限界がある。意識があっても、選べる選択肢が価格によって制約されているためである。
必要なのは、環境に配慮した選択が特別な負担にならない仕組みである。たとえば、負担の大きい世帯に補助を行い、余裕のある層により多く負担してもらう形が考えられる。企業に対しても、排出量に応じた負担を求めることで、消費者だけに責任を負わせない配分ができる。
もっとも、補助や課税には財源が必要であり、どこまで実施できるかという制約もある。すべてを公費で支えることはできない。
ただし、こうした制度は合意が難しい。誰がどれだけ負担するかは、利害が対立する問題だからである。だからこそ、負担の配分を議論の中心に置くべきだと考える。
この答案のどこが評価されるか
| 箇所 | 評価される点 |
|---|---|
| 冒頭で論点を絞った | 「負担の配分」と明示している |
| 問題文の記述を使った | 与えられた条件を読んでいる |
| 同じ千円でも重みが違う | 抽象論になっていない |
| 格差を生む可能性を指摘 | 環境対策の副作用を見ている |
| 「意識を高める」を退けた | ありがちな結論を避けている |
| 合意の難しさも認めた | 一方的でない |

また4段落目で「意識を高めるべきだ」という主張を退けている点も重要です。多くの答案が結論にする内容を、あえて否定しています。
この答案が避けたもの
| ありがちな展開 | なぜ避けたか |
|---|---|
| 環境を守ることは大切だ | 誰も反対しない |
| 一人ひとりの意識が重要だ | 構造の問題を見落とす |
| 技術革新に期待する | 今の課題への答えにならない |
| 企業の責任が大きい | それだけでは配分を論じていない |
使える語彙と表現

基本の用語
| 語 | 意味 |
|---|---|
| 持続可能性 | 将来にわたって続けられること |
| カーボンニュートラル | 排出量と吸収量を差し引きゼロにする |
| 世代間の公平 | 今の世代と将来世代の間の負担の均衡 |
| 外部不経済 | 費用を負わない第三者に損害が及ぶこと |
| 循環型社会 | 資源を繰り返し使う社会 |
| 生態系サービス | 自然が人にもたらす恩恵 |
使うと論が深まる表現
| 表現 | 使う場面 |
|---|---|
| 負担を誰が負うか | ほぼすべてのテーマ |
| 排出と被害は一致しない | 気候変動・国際問題 |
| 意識だけでは変わらない | 行動変容・消費 |
| 選べる人と選べない人 | 価格・格差 |
| 環境保護どうしの対立 | 再エネ・開発 |
注意したい表現
| 避けたい | 理由 |
|---|---|
| 環境を守るべきだ | 誰も反対しない |
| 一人ひとりの意識が大切 | 構造の問題を見落とす |
| 企業が悪い | 消費する側の需要もある |
| 経済成長をやめるべき | 現実味を欠く |
| 自然に戻すべきだ | 手つかずが最善とは限らない |
よくある失敗
失敗1:総論で終わる
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| 環境問題は人類共通の課題であり、真剣に取り組む必要がある。 | 環境対策の課題は、負担を誰が負うかにある。 |
誰も反対しない主張は、意見になりません。論点を絞ってください。
失敗2:意識の問題にする
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| 一人ひとりが環境への意識を高めることが重要である。 | 意識があっても、選べる選択肢が価格で制約されている。 |
失敗3:数字を不正確に使う
記憶に頼った数字は書かないでください。
| × | ○ |
|---|---|
| 日本の食料自給率は38%である | 日本は食料の多くを輸入に頼っている |
| 2050年までに50%削減する | 削減目標が掲げられている |
失敗4:片方の立場だけで書く
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| 再生可能エネルギーへの転換を急ぐべきである。 | 転換は必要だが、設置をめぐる地域との対立や、コスト負担の偏りにも目を向ける必要がある。 |
環境テーマは対立を含みます。片方だけを書くと、考えが浅く見えます。
失敗5:極端な結論を出す
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| 経済成長を止めるべきである。 | 成長の内容を問い直す必要がある。 |
実現不可能な提案は評価されません。制約の中で何ができるかを考えてください。
よくある質問
どのテーマを優先して準備しますか
| 優先度 | テーマ |
|---|---|
| 高 | 気候変動・再生可能エネルギー |
| 中 | プラスチックごみ・食料と農業 |
| 低 | 生物多様性 |
上の2つで大半をカバーできます。
ただし農学部・生物系では生物多様性も出やすいので、志望先で調整してください。
理系と文系で書き方は違いますか
| 理系(農学・環境・工学) | 文系(経済・法・国際) | |
|---|---|---|
| 重視される点 | 仕組みの理解・技術的な実現性 | 制度・負担の配分・国際関係 |
| 出やすいテーマ | エネルギー・生態系 | 気候変動と経済・国際交渉 |
どちらでも「負担の配分」は使えます。理系でも、技術があっても普及しない理由として費用を論じられます。
科学的な知識は必要ですか
高校の範囲で十分です。
専門的な数値やメカニズムを問う出題は、小論文ではほとんどありません。
求められているのは社会の問題として考える力です。
「SDGs」に触れるべきですか
必須ではありません。
用語を挙げるだけでは評価されません。触れるなら、目標どうしが対立する場面まで書いてください。
たとえば、経済成長を目指す目標と、環境を守る目標は、同時に達成しにくい場合があります。
自分の体験を書いてもいいですか
書いてください。ただし小さな話にとどめないことです。
| 良い使い方 | 避けたい使い方 |
|---|---|
| 体験から構造を考える | 節約の工夫を並べる |
| 地域で見た変化を述べる | 環境に配慮した自分の行動を誇る |
賛否の分かれるテーマはどう扱いますか
原子力や経済成長との関係は、立場が大きく分かれます。
どちらかを一方的に断じるのではなく、両論に触れたうえで自分の立場を示してください。
字数はどのくらいが多いですか
| 字数 | 出題の傾向 |
|---|---|
| 600字 | 最も多い |
| 800字 | 次に多い |
| 1000字以上 | 国立大で出ることがある |
次にやること
まず気候変動と再生可能エネルギーの2テーマについて、メモを作ってください。定義・現状・論点・賛否の根拠・具体例の5項目です。
そのうえで、この記事の問題文を使って実際に書いてみてください。読むだけでは力がつきません。
環境テーマはデータ型でも出題されます。排出量や気温の推移をグラフで示し、読み取りと意見を求める形式です。データ型の解き方をまとめた記事もあわせて確認してください。
総合型選抜や推薦入試を受ける場合は、志望理由書の準備も並行して進めてください。







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