医学部・看護学部の小論文では、出るテーマがほぼ決まっています。少子高齢化、地域医療、終末期医療——この3つで大半を占めます。
逆に言えば、準備すれば必ず当たる分野です。
この記事では頻出5テーマの論点・賛否の根拠・使える語彙を整理しました。600字の答案例も載せています。

主な勉強場所はどこ?
医療系で問われる傾向
まず、テーマの知識の前に、採点者が何を見ているかを押さえてください。
| 見られる点 | 具体的には |
|---|---|
| 患者の視点 | 制度や効率だけで語っていないか |
| 多職種への理解 | 医師だけでなく看護師・介護職も見えているか |
| 限界の自覚 | 医療で解決できないことを認識しているか |
| 倫理的な配慮 | 本人の意思を軽視していないか |
最も避けたいのは、患者を「対象」として扱う書き方です。

| 避けたい書き方 | 望ましい書き方 |
|---|---|
| 高齢者を効率的に管理する | 高齢者が望む暮らしを支える |
| 患者に指導する | 患者とともに考える |
| 医療費を削減する | 限られた資源をどう配分するか |
同じ内容でも、言葉の選び方で印象が変わります。
頻出テーマ1:少子高齢化と医療

現状
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 人口構造 | 高齢者が増え、支える現役世代が減少 |
| 医療費 | 高齢化に伴い増加が続く |
| 担い手 | 医療・介護職の人手不足 |
| 家族 | 単身世帯の増加で介護の担い手が不足 |
主な論点
| 論点 | 対立する見方 |
|---|---|
| 医療費の負担 | 世代間で公平に/高齢者の負担増は生活を圧迫 |
| 医療の範囲 | 延命を優先/生活の質を優先 |
| 担い手の確保 | 外国人材の受け入れ/処遇改善が先 |
| 予防への転換 | 健康寿命を延ばす/自己責任論につながる危険 |
使える視点
「高齢者を負担として語らない」ことが重要です。
| 視点 | 書き方の例 |
|---|---|
| 高齢者も支え手になりうる | 地域活動や就労を続ける高齢者も多い |
| 問題は年齢ではなく仕組み | 支える形を変える必要がある |
| 予防と自己責任は別 | 健康は環境にも左右される |
4つ目の「予防への転換」が使いやすい論点です。「予防が大切」で終わらせず、「健康を保てるかは経済状況や住環境にも左右される」と一歩踏み込むと、答案に深みが出ます。
頻出テーマ2:地域医療

現状
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 医師の偏在 | 都市部に集中し、地方が不足 |
| 診療科の偏り | 産科・小児科・外科の不足 |
| 病院の統廃合 | 人口減少で維持が困難に |
| 通院の負担 | 公共交通が少ない地域での移動 |
主な論点
| 論点 | 対立する見方 |
|---|---|
| 医師の配置 | 地域枠や強制配置/職業選択の自由 |
| 集約か分散か | 拠点病院に集約/身近な医療の維持 |
| オンライン診療 | アクセスの改善/対面でないと分からないこと |
| 役割分担 | 看護師の裁量拡大/責任の所在 |
使える視点
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 医療だけの問題ではない | 交通・住居・雇用と結びついている |
| 集約には利点もある | 症例が集まり、医療の質が上がる |
| 移動を支える発想 | 病院を増やすより、通える仕組みを作る |
3つ目の発想が評価されます。「病院がないなら作る」ではなく、「通院を支える交通手段を整える」という考え方です。
頻出テーマ3:終末期医療

現状
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 延命治療 | 本人の意思が不明なまま継続される例 |
| 事前の意思表示 | 普及が進んでいない |
| 看取りの場所 | 在宅を望む人が多いが実現は限られる |
| 家族の負担 | 判断を家族が背負う |
主な論点
| 論点 | 対立する見方 |
|---|---|
| 本人の意思 | 尊重すべき/状況で変わりうる |
| 家族の役割 | 本人をよく知る/本人の意思とは別 |
| 医療の役割 | 命を守る/苦痛を和らげる |
| 在宅か施設か | 希望の尊重/介護力の現実 |
使える視点
意思は変わりうるという点に触れられると、答案の質が上がります。
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 意思は固定されない | 健康なときと病気のときで考えが変わる |
| 一度決めて終わりではない | 繰り返し話し合う過程が必要 |
| 家族も支援の対象 | 判断を家族だけに背負わせない |
頻出テーマ4:医療とAI

現状
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 画像診断 | AIによる支援が実用化しつつある |
| 記録の効率化 | カルテ作成の負担軽減 |
| 創薬 | 開発期間の短縮に期待 |
| 普及の課題 | 費用・施設間の格差 |
主な論点
| 論点 | 対立する見方 |
|---|---|
| 診断の責任 | 最終判断は医師/AIの精度が上回る場合 |
| 医療者の役割 | 判断から解放される/技術が失われる |
| 患者との関係 | 対話の時間が増える/機械的になる |
| 格差 | 地域差の縮小/導入できる施設の偏り |
使える視点
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| AIは判断を代行しない | 情報を示すが、決めるのは人 |
| 医療は説明を含む | 診断名を伝えるだけが医療ではない |
| 効率化の使い道 | 削減された時間を何に使うか |
頻出テーマ5:感染症と公衆衛生

現状
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 医療体制 | 感染拡大時の病床確保 |
| 情報 | 正確な情報の伝達と不安への対応 |
| 格差 | 職業や住環境による感染リスクの差 |
| 後遺症 | 回復後の生活への影響 |
主な論点
| 論点 | 対立する見方 |
|---|---|
| 個人の自由と公衆衛生 | 行動制限は必要/自由の制約は最小限に |
| 医療資源の配分 | 重症者優先/年齢で区別しない |
| 情報公開 | 透明性が必要/差別を生む危険 |
| 平時の備え | 余力を持つ/平時の非効率 |
使える視点
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 感染リスクは平等でない | 在宅勤務できる人とできない人 |
| 医療は社会に支えられる | 物流・清掃・保育があって成り立つ |
| 余力は無駄ではない | 平時の余裕が非常時を支える |
1つ目が最も評価される視点です。「みんなで気をつけよう」ではなく、「気をつけられる立場にない人がいる」という指摘は、評価される答案になります。

答案例【600字】
設問は「地域医療の課題について、あなたの考えを述べなさい」とします。
地域医療の課題として、医師の偏在がしばしば指摘される。しかし私は、医師の数だけを問題とする見方には限界があると考える。
たしかに地方の医師不足は深刻である。産科や小児科が閉鎖され、隣の市まで通わなければならない地域もある。医師を増やす取り組みは必要である。
しかし、医師が来れば解決するとは限らない。私の祖母が暮らす町では、診療所はあるが、そこまで行く手段がない。バスは1日に数本で、運転できなくなった高齢者は通院を諦めることがある。医療機関の数ではなく、そこへ到達できるかが問題になっている。
また、集約が常に悪いとは言えない。症例が一か所に集まれば、医師の経験が蓄積し、医療の質は上がる。小さな病院を各地に残すことが、必ずしも住民のためになるとは限らない。重要なのは、拠点となる病院へ通える仕組みを整えることではないか。
具体的には、自治体が運行する送迎の仕組みや、オンライン診療で日常的な相談を受け、必要なときだけ受診する形が考えられる。ただしオンライン診療には、対面でなければ気づけない変化を見落とす危険もある。すべてを置き換えるのではなく、使い分けが必要である。
さらに、地域で働く医療者を支える視点も欠かせない。少人数で当直を回す環境では、医師が定着しない。人を呼ぶだけでなく、続けられる体制を整える必要がある。
地域医療の課題は、医療だけで解決できない。交通や住まいを含めて、そこで暮らし続けられる条件を考えるべきだと私は考える。
この答案のどこが評価されるか
| 箇所 | 評価される点 |
|---|---|
| 一般的な指摘をいったん認めた | 知識があることを示せる |
| 「しかし」で論点を移した | 自分の視点がある |
| 祖母の町という具体例 | 抽象論になっていない |
| 集約の利点にも触れた | 一方的でない |
| オンライン診療の限界も指摘 | 安易な解決策に飛びついていない |
| 医療の外に論を広げた | 視野の広さが伝わる |
3段落目が要です。「医師不足」という既定の論点から、「移動手段」という別の視点へ移しています。
また5段落目でオンライン診療の限界に触れている点も重要です。解決策を示したあと、その弱点も認めています。
使える語彙と表現

医療系で評価される語彙を整理しました。無理に使う必要はありませんが、知っておくと表現の幅が広がります。
基本の用語
| 語 | 意味 |
|---|---|
| QOL | 生活の質。延命だけでなく、どう生きるかを含む |
| インフォームド・コンセント | 説明を受けたうえでの同意 |
| 地域包括ケア | 医療・介護・住まいを地域で一体的に支える |
| チーム医療 | 多職種が役割を分担して連携する |
| 健康寿命 | 介護を必要とせず生活できる期間 |
| 緩和ケア | 苦痛を和らげ、生活の質を保つ医療 |
使うと論が深まる表現
| 表現 | 使う場面 |
|---|---|
| 本人の意思を中心に | 終末期・治療方針 |
| 生活の場で支える | 在宅医療・地域医療 |
| 多職種で連携する | チーム医療 |
| 限られた資源をどう配分するか | 医療費・病床 |
| 医療だけで解決できない | 社会的な要因に触れる |
注意したい表現
| 避けたい | 理由 |
|---|---|
| 患者を救う | 一方的な救済に聞こえる |
| 高齢者は負担である | 人を負担として扱っている |
| 自己責任 | 環境要因を無視している |
| 感動を与える看護 | 看護の目的ではない |
| 命を最優先に | 本人の意思と対立しうる |
「命を最優先に」は一見正しく見えますが、注意が必要です。終末期医療では、延命よりも苦痛の緩和を望む人がいます。
よくある失敗
失敗1:制度の説明で終わる
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| 地域包括ケアシステムとは、医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供する仕組みである。 | (制度の説明は最小限にし、自分の意見に字数を使う) |
知識の量は問われていません。用語の説明に字数を使うと、肝心の意見が薄くなります。
失敗2:「思いやり」で終わる
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| 患者に寄り添う気持ちが大切である。 | 患者が何を望んでいるかは、本人に聞かなければ分からない。繰り返し話す時間を確保する仕組みが必要である。 |
心構えだけでは評価されません。どうすればそれが可能になるかまで書いてください。
失敗3:医療者の視点だけで書く
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| 患者に正しい生活習慣を指導すべきである。 | 生活習慣を変えられるかは、労働時間や経済状況にも左右される。指導だけでは届かない層がいる。 |
「指導する」という発想に注意してください。相手の事情を見ていない答案に見えます。
失敗4:数字を不正確に使う
記憶に頼った統計は書かないでください。
| × | ○ |
|---|---|
| 高齢化率は約30%である | 高齢化が進んでいる |
| 医療費は年間40兆円を超える | 医療費は増加が続いている |
正確でない数字を書くより、傾向を示す表現のほうが安全です。
失敗5:志望理由と混同する
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| 私は将来、地域医療を支える看護師になりたい。 | (小論文では自分の進路ではなく、テーマについて論じる) |
小論文は志望理由書ではありません。設問が求めているのは、テーマへの考察です。
よくある質問
どのテーマを優先して準備しますか
| 優先度 | テーマ |
|---|---|
| 高 | 少子高齢化・地域医療 |
| 中 | 終末期医療 |
| 低 | 医療とAI・感染症 |
上の2つで大半をカバーできます。まずここから準備してください。
医学部と看護学部で違いますか
| 医学部 | 看護学部 | |
|---|---|---|
| 重視される点 | 制度・倫理・科学的な視点 | 患者の生活・多職種連携 |
| 出やすいテーマ | 医療制度・研究倫理 | 在宅医療・チーム医療 |
看護学部では「生活を支える」視点が求められます。病気だけでなく、その人の暮らし全体を見る姿勢です。
専門知識はどこまで必要ですか
高校の範囲で十分です。
医学的な知識を問う出題はほとんどありません。求められているのは社会の問題を医療の側から考える力です。
新聞の医療・社会面を読む習慣があれば足ります。
自分の体験を書いてもいいですか
書いてください。具体性が出ます。
| 使える体験 |
|---|
| 家族の入院・介護に関わった |
| 病院でのボランティア |
| 地域で見聞きしたこと |
ただし体験談で終わらないことです。そこから何を考えたかにつなげてください。
賛否の分かれるテーマはどう扱いますか
両論に触れたうえで、自分の立場を示してください。
終末期医療や医療資源の配分は、正解のない問題です。片方の立場だけを書くと、考えが浅く見えます。
「たしかに〜という見方もある。しかし〜」の形が使いやすくなります。
字数はどのくらいが多いですか
| 字数 | 出題の傾向 |
|---|---|
| 600字 | 最も多い |
| 800字 | 次に多い |
| 1000字以上 | 難関大で出る |
600字で練習しておけば、多くの大学に対応できます。
課題文型が出る場合はどうしますか
医療系では課題文型が多く出ます。
医療に関する文章を読み、要約と意見を書く形式です。テーマの知識があれば、読解も速くなります。
この記事で論点を押さえたうえで、課題文型の解き方を確認しておいてください。
次にやること
まず少子高齢化と地域医療の2テーマについて、メモを作ってください。定義・現状・論点・賛否の根拠・具体例の5項目です。
メモができたら、600字で実際に書いてみてください。読むだけでは力がつきません。
志望校の過去問で出題形式を確認することも忘れないでください。課題文型なのかテーマ型なのかで、対策が変わります。それぞれの解き方をまとめた記事も用意しています。
総合型選抜や推薦入試を受ける場合は、志望理由書の準備も並行して進めてください。







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