「グローバル化について論じなさい」——このように題だけが与えられるのがテーマ型の小論文です。
3つの形式の中で最も難しいと言われます。課題文もデータもなく、材料をすべて自分で用意する必要があるためです。
逆に言えば、準備した人が有利になる形式でもあります。この記事では発想の手順と、学部別の頻出テーマを示します。
主な勉強場所はどこ?
テーマ型が難しい理由

| 形式 | 材料 | 難しさ |
|---|---|---|
| 課題文型 | 本文にある | 読解が必要 |
| データ型 | 資料にある | 読み取りが必要 |
| テーマ型 | 自分で用意 | 知識と発想が必要 |
材料がない状態から書き始める——ここが最大の壁です。
「何を書けばいいか分からない」という悩みは、書く力の問題ではありません。材料を探す手順を知らないだけです。
よくある失敗の流れ
| 段階 | 起きること |
|---|---|
| 1 | テーマを見て、思いついたことを書き始める |
| 2 | 200字ほどで書くことがなくなる |
| 3 | 同じ内容を言い換えて字数を稼ぐ |
| 4 | 薄い答案のまま提出 |
原因は1段階目にあります。いきなり書き始めるから、途中で行き詰まるのです。
発想の手順【5つの問い】
テーマを見たら、次の5つを自問してください。材料が出てきます。

| 順 | 問い | 出てくるもの |
|---|---|---|
| 1 | この言葉はどういう意味か | 定義・範囲 |
| 2 | なぜ今これが問われるのか | 背景・現状 |
| 3 | 誰にとっての問題か | 立場の違い |
| 4 | 良い面と悪い面は何か | 両論 |
| 5 | どうすればよいか | 結論 |
5分かけて、この5つに答えをメモしてください。それだけで書く材料が揃います。
実際にやってみる
テーマを「地方創生」とします。
| 問い | メモの例 |
|---|---|
| ①定義 | 人口減少が進む地域の活性化。移住促進・産業育成・観光 |
| ②背景 | 都市への人口集中。地方の高齢化。財政の悪化 |
| ③立場 | 住民・自治体・移住者・企業で求めるものが違う |
| ④両論 | 良:地域が存続する/悪:補助金頼みになる |
| ⑤結論 | 人を増やすより、少ない人数で成り立つ形を考えるべき |
①の定義が最も重要です。ここで「何を論じるか」の範囲が決まります。
「地方創生」は広い言葉なので、どの側面を扱うかを絞ってください。移住促進なのか、産業なのか、観光なのか。全部を書こうとすると薄くなります。
③「誰にとっての問題か」が効く

立場を分けると、論点が生まれます。
| 立場 | 求めるもの |
|---|---|
| 元からの住民 | 今の暮らしが続くこと |
| 自治体 | 税収と人口の維持 |
| 移住者 | 仕事と生活環境 |
| 企業 | 労働力と市場 |
同じ政策でも、立場によって評価が変わります。ここを指摘すると、答案に厚みが出ます。
書き方の型【4部構成】

| 部 | 内容 | 字数の目安(800字) |
|---|---|---|
| ① 定義と現状 | テーマを自分なりに定義 | 120〜150字 |
| ② 問題の所在 | 何が課題なのか | 200〜250字 |
| ③ 自分の意見 | どう考えるか・理由2つ | 350〜400字 |
| ④ まとめ | 結論を一文で | 80〜100字 |
①で定義を示すのが、テーマ型の特徴です。課題文型やデータ型では不要ですが、テーマ型では「何について書くか」を自分で決める必要があります。
答案例【800字】
テーマは「地方創生」です。先ほどの5つの問いのメモから書いています。
地方創生とは、人口減少が進む地域が存続していくための取り組みを指す。移住の促進、産業の育成、観光の振興などが含まれる。私はこの中でも、人口を増やすことを目標とする政策には限界があると考える。
現在、多くの自治体が移住支援金や子育て支援によって人を呼び込もうとしている。しかし全国の自治体が同じ方法をとれば、限られた人口を奪い合うことになる。ある町の成功は、別の町の人口減少を意味する。国全体で見れば人口は増えていない以上、この競争に終わりはない。補助金が切れれば移住者が去る例も報告されている。
私が必要だと考えるのは、人口が減ることを前提に、少ない人数でも成り立つ地域の形を考えることである。理由は二つある。
第一に、人口減少は当面続くと予測されているからである。出生数が回復する見込みが立たない以上、人を増やす前提の計画は現実的でない。それよりも、住民が少なくても生活機能が維持される仕組みを作るほうが確実である。たとえば、複数の集落で一つの診療所や商店を共有する形が考えられる。
第二に、立場によって求めるものが違うからである。自治体は税収と人口を求めるが、元から住む人が望むのは今の暮らしが続くことである。移住者を増やしても、住民の生活が便利にならなければ意味がない。人口という数字ではなく、暮らしの質を基準にすべきではないか。
ただし、地域が縮小していくことを受け入れるのは容易ではない。学校の統合や施設の廃止には反対が起こる。だからこそ、行政が一方的に決めるのではなく、住民が議論に加わる過程が必要になる。
地方創生の目標は、人口を増やすことではない。そこで暮らす人が、これからも暮らし続けられるようにすることである。数字ではなく生活を基準に政策を組み立てるべきだと考える。
この答案のどこが評価されるか
| 箇所 | 評価される点 |
|---|---|
| 冒頭で定義を示した | 論じる範囲が明確 |
| 「この中でも」と絞った | 広いテーマを限定できている |
| 自治体間の競争を指摘 | 一般論で終わっていない |
| 立場の違いに触れた | 複数の視点がある |
| 具体例を出した | 抽象論になっていない |
| 反対の困難を認めた | 一方的でない |
| 目標を問い直して締めた | 問いの立て直しができている |
2段落目が要です。「移住支援は全国で競争になる」という指摘は、テーマをよく考えていないと出てきません。
学部別の頻出テーマ

志望学部によって出るテーマは決まっています。過去問で傾向を確認してください。
医療・看護
| テーマ | 主な論点 |
|---|---|
| 少子高齢化 | 医療費・介護の担い手・世代間の負担 |
| 地域医療 | 医師の偏在・無医村・オンライン診療 |
| 終末期医療 | 延命治療・本人の意思・家族の負担 |
| 医療とAI | 診断支援・責任の所在・医師の役割 |
| 感染症 | 公衆衛生と個人の自由 |
教育
| テーマ | 主な論点 |
|---|---|
| 学力格差 | 家庭環境・学習機会・世代間連鎖 |
| ICT教育 | デジタル機器の活用・格差の拡大 |
| いじめ | 早期発見・傍観者・学校の役割 |
| 教員の負担 | 長時間労働・部活動・人材確保 |
| 不登校 | 多様な学びの場・居場所 |
法・政治
| テーマ | 主な論点 |
|---|---|
| 表現の自由 | ヘイトスピーチ・名誉毀損・規制の限界 |
| 司法制度 | 裁判員制度・冤罪・司法へのアクセス |
| 選挙制度 | 投票率・一票の格差・若者の政治参加 |
| プライバシー | 監視社会・個人情報・安全との両立 |
| 死刑制度 | 存廃論・国際的な動向 |
経済・経営
| テーマ | 主な論点 |
|---|---|
| 働き方 | 非正規雇用・長時間労働・テレワーク |
| 格差 | 所得分配・機会の平等・再分配 |
| 地方創生 | 人口減少・産業・都市集中 |
| 企業の責任 | 環境・人権・利益との両立 |
| 消費行動 | ネット通販・シェアリング |
理工・情報
| テーマ | 主な論点 |
|---|---|
| 生成AI | 雇用・著作権・判断の委譲 |
| エネルギー | 再生可能エネルギー・原子力・コスト |
| 技術と倫理 | 研究の自由・悪用の可能性 |
| 自動運転 | 安全性・事故の責任 |
| 情報社会 | SNS・フェイクニュース・分断 |
国際・社会
| テーマ | 主な論点 |
|---|---|
| 多文化共生 | 移民・外国人労働者・言語の壁 |
| グローバル化 | 経済の一体化・文化の均質化 |
| 環境問題 | 気候変動・南北格差・世代間の公平 |
| ジェンダー | 格差・役割意識・制度 |
| 貧困 | 相対的貧困・子どもの貧困 |
5つ程度に絞って準備してください。すべてを網羅する必要はありません。
テーマの準備法
テーマ型は準備した人が有利になります。直前に材料を作ることはできません。
1テーマ1枚のメモを作る
| 書く項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | この言葉が指す範囲 |
| 現状 | いま何が起きているか |
| 論点 | 意見が分かれる点を2つ |
| 賛成の根拠 | 1つ |
| 反対の根拠 | 1つ |
| 具体例 | 1つ |
1テーマにつきA4用紙1枚で十分です。5テーマ分作れば、本番で使えます。
重要なのは賛成と反対を両方書くことです。どちらを問われても対応できます。
材料の集め方
| 方法 | 得られるもの |
|---|---|
| 新聞の社説を読む | 論点の整理・対立軸 |
| 関連書籍を1冊読む | 背景・歴史的経緯 |
| ニュース解説を見る | 現状・最近の動き |
| 学校の授業 | 基礎知識 |
社説が最も効率的です。1つのテーマが1000字程度でまとまっており、論点が整理されています。
ただし社説の意見をそのまま使わないでください。論点を借りて、自分の意見を作ってください。
準備するテーマ数
| 時期 | 目標 |
|---|---|
| 3か月前 | 3テーマ |
| 1か月前 | 5テーマ |
| 直前 | 見直しのみ |
5テーマで十分です。多く準備するより、1つのテーマを深く考えるほうが応用が利きます。
よくある失敗
失敗1:定義を示さずに書き始める
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| 地方創生は重要な課題である。 | 地方創生とは、人口減少が進む地域が存続していくための取り組みを指す。移住の促進、産業の育成、観光の振興などが含まれる。 |
テーマ型では定義が必須です。何について論じるかを、自分で決める必要があります。
失敗2:範囲を絞らない
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| 地方創生には移住促進、産業育成、観光振興、教育、医療などさまざまな課題がある。 | 私はこの中でも、人口を増やすことを目標とする政策には限界があると考える。 |
全部を書こうとすると薄くなります。1つに絞って深く論じてください。
失敗3:一般論で終わる
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| 地方の活性化には多くの人の協力が必要である。 | 全国の自治体が同じ方法をとれば、限られた人口を奪い合うことになる。ある町の成功は、別の町の人口減少を意味する。 |
誰でも書ける内容は評価されません。テーマについて考えた跡が見える書き方をしてください。
失敗4:知識をひけらかす
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| 2014年に地方創生法が制定され、まち・ひと・しごと創生総合戦略が策定された。 | (制度の説明は最小限にし、自分の意見に字数を使う) |
知識の量は問われていません。制度の説明に字数を使うと、肝心の意見が薄くなります。
失敗5:具体例がない
抽象論だけでは説得力が出ません。
| 使える具体例 |
|---|
| 自分の住む地域で見聞きしたこと |
| 報道で知った事例 |
| 学校で学んだ内容 |
| 想定される場面(たとえば〜という形が考えられる) |
4つ目が使いやすい方法です。実例を知らなくても、「こういう形が考えられる」と書けば具体性が出ます。
失敗6:結論が当たり障りない
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| 地方創生は簡単ではないが、努力が必要である。 | 地方創生の目標は、人口を増やすことではない。そこで暮らす人が、これからも暮らし続けられるようにすることである。 |
最後に立場を明確にしてください。「難しい問題だ」で終わると、何も述べていないことになります。
よくある質問
知らないテーマが出たらどうしますか
5つの問いに戻ってください。
| 問い |
|---|
| この言葉はどういう意味か |
| なぜ今これが問われるのか |
| 誰にとっての問題か |
| 良い面と悪い面は何か |
| どうすればよいか |
知識がなくても、この5つで材料は作れます。とくに③「誰にとっての問題か」は、どんなテーマでも使えます。
定義が分からない言葉が出たら
自分なりの定義で構いません。
「〜とは、ここでは〜を指すものとする」と書けば、論じる範囲を自分で決められます。
ただし常識から大きく外れないことが条件です。
賛成と反対のどちらを選ぶべきですか
理由を2つ書けるほうを選んでください。
立場そのものは採点されません。1つしか理由が思いつかない立場を選ぶと、途中で行き詰まります。
統計や数字は必要ですか
不要です。
正確でない数字を書くほうが危険です。「増加している」「減少傾向にある」といった表現で十分です。
自分の経験を書いてもいいですか
書いてください。むしろ具体性が出ます。
| 書き方 | 例 |
|---|---|
| 見聞きしたこと | 私の住む地域では〜 |
| 体験したこと | ボランティアで〜 |
ただし経験だけで終わらないことです。そこから何を考えたかにつなげてください。
他の形式とどう違いますか
| 形式 | 材料 | 準備 |
|---|---|---|
| テーマ型 | 自分で用意 | 事前の蓄積が必要 |
| 課題文型 | 本文にある | 読解の練習 |
| データ型 | 資料にある | 読み取りの練習 |
テーマ型だけが、事前の準備で差がつきます。他の2形式は当日の処理能力が問われますが、テーマ型は蓄積が効きます。
練習はどうすればいいですか
| 段階 | やること |
|---|---|
| 1 | 5つの問いにメモで答える(15分) |
| 2 | 構成を組む(10分) |
| 3 | 書く(40分) |
最初はメモだけの練習でも構いません。5つの問いに答える作業に慣れると、本番で材料が出てくるようになります。
次にやること
まず志望学部の頻出テーマを3つ選んでください。過去問を見れば傾向が分かります。
選んだテーマについて、1テーマ1枚のメモを作ってください。定義・現状・論点・賛否の根拠・具体例の6項目です。
メモができたら、実際に書いてみてください。週1本のペースで、5本目までに本番の時間に近づけるのが現実的です。
課題文型やデータ型が出る場合は、それぞれの解き方をまとめた記事もあります。形式ごとに対策が違うので、志望校の過去問で確認してください。







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