中学入試の国語で、最も配点が高いのが記述問題です。1問で5〜10点、学校によってはそれ以上のこともあります。
ところが、多くのお子さんは「何を書けばいいか分からない」まま空欄にしてしまいます。
実は、心情記述には決まった型があります。型を知っていれば、白紙で出すことはなくなります。この記事では、書く手順と減点されないルールを整理しました。
記述問題の重要性

気持ち表現の記述問題は一見して難しいと思われがちですが、実際はそのようなことはありません。生徒やその保護者とお話をする際、よくある思い込みとして以下のようなものが見受けられます。
| 思い込み | 実際 |
|---|---|
| 記述は難しいから捨てる | 部分点があるので、書けば点になる |
| 完璧な答えでないと点がもらえない | 要素が1つでも入っていれば加点される |
| 時間がかかるから後回しにすべき | 配点が高いので、優先度はむしろ高い |
記述問題には部分点があります。満点でなくても、要素が入っていれば点になります。
心情記述の型【4つの要素】
「このときの気持ちを答えなさい」という設問には、次の4つを入れます。
| 要素 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| ① 背景 | それまでの状況 | 転校が決まっていたが |
| ② きっかけ | 何が起きたか | 友達が送別会を開いてくれたので |
| ③ 心情語 | どういう気持ちか | うれしさと切なさが入り混じった |
| ④ 文末 | 設問に対応させる | 気持ち。 |
③の心情語が答案の中心です。ここが的確であれば、他の要素も書きやすくなります。
字数によって要素を調整する
| 字数 | 入れる要素 |
|---|---|
| 30字程度 | きっかけ+心情語 |
| 50字程度 | きっかけ+心情語+理由 |
| 80字以上 | 背景+きっかけ+心情語+理由 |
書く順番は「後ろから」が原則

これがこの記事で最も大切な部分です。
多くの生徒は、頭から書こうとして手が止まります。先に心情語を決めてください。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 心情語を決める(答案の後半にくる) |
| 2 | その気持ちになった理由を探す(答案の前半にくる) |
| 3 | 理由 → 心情語 の順に並べて書く |
なぜ後ろから考えるべきか
心情は、登場人物の行動・様子・表情から推測できるからです。
| 本文の描写 | 推測できる心情 |
|---|---|
| 顔が青くなった | ショック・おどろき |
| 顔が赤くなった | 恥ずかしさ・怒り |
| 下を向いてトボトボ歩いた | 落ち込み・悲しみ |
| 肩を落とした | がっかり・失望 |
| 唇をかみしめた | くやしさ・がまん |
描写から心情が浮かべば、そこが答案の後半になります。あとは「なぜそうなったか」を前半に足すだけです。
心情が分からないとき
自分だったらどう感じるかを考えてください。
「テストを頑張ったのに点が悪かった」なら、自分ならどう思うか。ショック、恥ずかしい、悔しい——どれかは浮かぶはずです。
ただし、この方法が使えるのは記述問題だけです。選択問題で自分の感覚を持ち込むと、本文にない答えを選んでしまいます。
3つの例題で実践

例題1:基本の型
【本文】
健太は毎晩おそくまで漢字の練習を続けてきた。今日返ってきたテストの点数を見て、健太の顔はみるみる青くなった。答案を折りたたんでランドセルにしまうと、下を向いたまま教室を出た。
【問い】傍線部のときの健太の気持ちを、40字以内で説明しなさい。
手順1:心情語を決める
| 本文の描写 | 推測できる心情 |
|---|---|
| 顔が青くなった | ショックを受けた |
| 答案を折りたたんだ | 人に見られたくない=恥ずかしい |
| 下を向いたまま | 落ち込んでいる |
手順2:理由を探す
本文に「毎晩おそくまで練習を続けてきた」とあります。頑張ったのに結果が出なかったことが理由です。
手順3:理由→心情語の順に書く
努力を続けてきたのに点数が悪く、ショックを受けて情けなく思う気持ち。(33字)
| 要素 | 該当部分 |
|---|---|
| 背景・きっかけ | 努力を続けてきたのに点数が悪く |
| 心情語 | ショックを受けて情けなく思う |
| 文末 | 気持ち。 |
例題2:気持ちが変化する型
難関校で最も出る形です。
【本文】
美咲は転校が決まってから、ずっと口数が少なかった。教室の空気になじめないまま、最後の日を迎えようとしていた。ところが放課後、教室の扉を開けると、黒板いっぱいに寄せ書きが書かれていた。美咲の目から、こらえきれずに涙がこぼれた。
【問い】傍線部のときの美咲の気持ちを、60字以内で説明しなさい。
変化の型では、5つの要素が必要になります。
| 要素 | 該当部分 |
|---|---|
| ① 変化前の理由 | 転校が決まってから |
| ② 変化前の心情 | さみしさを抱えていた |
| ③ 変化のきっかけ | 寄せ書きを見て |
| ④ 変化後の理由 | 気持ちが伝わり |
| ⑤ 変化後の心情 | うれしさで胸がいっぱいになった |
転校が決まってさみしさを抱えていたが、黒板の寄せ書きにみんなの気持ちが表れていて、うれしさで胸がいっぱいになる気持ち。(58字)
「〜だったが、〜して、〜という気持ち」という形になります。「が」で変化を示すのが要点です。
例題3:複雑な心情の型
2つの気持ちが同時にある場合です。上位校で出ます。
【本文】
まわりの声が大きくなるほど、翔太は足がすくんだ。補欠だった自分が、決勝の舞台に立っている。仲間の顔が浮かんだ。バットを握る手に、じわりと汗がにじんだ。
【問い】傍線部のときの翔太の気持ちを、50字以内で説明しなさい。
補欠だった自分が決勝の打席に立てたことを誇らしく思う一方で、仲間の期待に応えられるか不安に思う気持ち。(50字)
「〜する一方で、〜という気持ち」という形です。プラスとマイナスの両方を書きます。
| 使える表現 | 場面 |
|---|---|
| 〜する一方で | 2つの気持ちが並ぶ |
| 〜しながらも | 一方を抑えている |
| 〜と同時に | 同時に生じている |
| 〜が入り混じった | 区別しにくい |
減点されないための5つのルール

内容が合っていても、形で減点されることがあります。
ルール1:文末を設問に合わせる
最も多い減点です。1〜2点引かれます。
| 設問 | 正しい文末 |
|---|---|
| どのような気持ちか | 〜という気持ち。 |
| なぜか/理由を述べよ | 〜から。/〜ため。 |
| どういうことか | 〜ということ。 |
| どのように変わったか | 〜と変わった。 |
ルール2:字数は9割以上書く
| 指定 | 目標 |
|---|---|
| 40字以内 | 36字以上 |
| 60字以内 | 54字以上 |
| 80字以内 | 72字以上 |
ルール3:主語を明確にする
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| うれしく思う気持ち。 | 友達の気持ちが伝わり、うれしく思う気持ち。 |
誰が何をしたのかが分からない答案は、採点者に伝わりません。
ルール4:本文にない言葉を使わない
心情語は本文から探してください。
登場人物の気持ちは、多くの場合本文中に書かれています。傍線部の前後を見て、気持ちを表す言葉に線を引いてください。
ルール5:字をていねいに書く
採点者が読めなければ、点になりません。
トメ・ハネで減点する学校もあります。速く書くより、読める字で書くことを優先してください。
練習問題【3問】
実際に書いてみてください。答えはタップすると開きます。
練習1
【本文】
夏休みの自由研究を提出した日、先生が教室のうしろに作品を並べた。ゆうきの作品の前に、次々と人が集まってくる。「これ、すごいな」という声が聞こえた。ゆうきはうつむいたまま、口元がゆるむのをこらえていた。
【問い】傍線部のときのゆうきの気持ちを、40字以内で説明しなさい。
- 1心情語は何か?(本文の描写から)「口元がゆるむ」=うれしさがこらえきれない
- 2きっかけは何か?「すごいな」という声が聞こえた
- 3なぜうつむいているのか?素直に喜びを表せない様子
- 4答案例(39字)「〜ながらも」で2つの気持ちを示した
数日あけてから、もう一度この一覧に戻ってきてください。
練習2
【本文】
リレーの選手に選ばれたとき、さくらは喜んだ。しかし練習が始まると、自分だけがいつも最後だった。本番前日、さくらは「わたし、走りたくない」とつぶやいた。翌朝、下駄箱に一枚のメモが入っていた。「さくらがいるから、うちのチームは強い」。差出人の名前はなかった。さくらはメモを握りしめ、運動場へ走り出した。
【問い】傍線部のときのさくらの気持ちを、60字以内で説明しなさい。
- 1これはどの型か?「走りたくない」→「走り出した」と変わっている
- 2変化前の心情は?自分だけが遅いという劣等感
- 3変化のきっかけは?仲間に必要とされていると分かった
- 4変化後の心情は?走ろうと決意している
- 5答案例(59字)「〜が」で変化を示すのが型
数日あけてから、もう一度この一覧に戻ってきてください。
練習3
【本文】
祖父が大切にしていた古い柱時計が、とうとう動かなくなった。修理には高い費用がかかると言われた。父は「もう買い替えよう」と言った。母はうなずいた。ぼくは何も言えずに、止まったままの時計の文字盤を見つめていた。
【問い】傍線部のときの「ぼく」の気持ちを、50字以内で説明しなさい。
- 1心情語は何か?見つめている=心残りがある
- 2なぜ何も言えないのか?反対する理由が言えない
- 3背景は何か?大切にしていたもの
- 4答案例(49字)反対できない事情まで書くと厚みが出る
数日あけてから、もう一度この一覧に戻ってきてください。
よくある質問

何も思いつかないときは
空欄で出さないでください。部分点があります。
| できること |
|---|
| 本文から気持ちを表す言葉を探して書き写す |
| 登場人物の行動から心情を推測する |
| 自分だったらどう感じるかを書く |
1つでも要素が合っていれば、点が入ります。
字数が足りません
| 足す順序 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 背景(それまでの状況)を前に足す |
| 2 | きっかけをくわしく書く |
| 3 | 心情語を2つにする(〜する一方で) |
前半が字数調整の場です。心情語と文末は変えずに、理由を厚くします。
字数が多すぎます
| 削る順序 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 同じ意味の繰り返しを消す |
| 2 | 具体的な表現をまとめる |
| 3 | 修飾語を減らす |
心情語と文末は最後まで残してください。ここを削ると要素が落ちます。
選択問題との違いは
| 記述 | 選択 | |
|---|---|---|
| 自分の感覚 | 使ってよい | 使わない |
| 根拠 | 本文から探す | 本文から探す |
選択問題で「自分ならこう思う」と考えると、本文にない答えを選びます。記述だけの方法だと覚えてください。
心情語が出てこないときは
語彙を増やすしかありません。
「悲しい」しか知らなければ、「切ない」「やるせない」「むなしい」の区別はできません。心情語を100語ほど覚えておくと、書ける幅が広がります。
親はどこまで見ればいいですか
本文のどこに根拠があるかを一緒に確認するだけで十分です。
| 見るポイント |
|---|
| 心情語が本文の流れと合っているか |
| きっかけが書けているか |
| 文末が設問に対応しているか |
言い回しの添削は不要です。細かく直しすぎると、書くこと自体を嫌がるようになります。
まず何をほめればいいですか
書いたこと自体をほめてください。
記述を白紙で出さずに書いた、というだけで前進です。「書けば点になる」という実感を持てれば、次も書くようになります。
次にやること
まず心情語を増やしてください。語を知らなければ、型を覚えても書けません。
そのうえで、この記事の練習問題をもう一度解いてみてください。型を意識して書くと、手が止まりにくくなります。
心情語の一覧とプリントも用意しています。意味を覚えたら、意味から語を答える練習に進むと、記述で使えるようになります。
物語文を読むときは、気持ちが変わった場所に線を引く習慣をつけてください。そこが設問になります。





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