グラフや表を読み取って論じるデータ型の小論文は、近年増えている出題形式です。
この形式が苦手だという人は多いのですが、原因ははっきりしています。数字を読むだけで終わってしまうことです。
データ型で求められているのは読み取りではなく、そこから何を考えたかです。この記事では読み取りの手順と、意見につなげる方法を示します。
主な勉強場所はどこ?
データ型で問われていること
| 段階 | 問われること |
|---|---|
| 読み取り | データから事実を正確に取り出せるか |
| 解釈 | なぜそうなっているかを考えられるか |
| 論述 | 解釈をもとに意見を述べられるか |
3段階あります。多くの答案は1段階目で止まっています。

| 答案の水準 | 内容 |
|---|---|
| 低い | グラフの数字を並べただけ |
| 普通 | 変化の傾向を述べている |
| 高い | 原因を考え、意見につなげている |
「2010年は30%、2020年は45%に増加した」だけでは不十分です。なぜ増えたのか、それが何を意味するのかまで書いてください。
出題のパターン
| 形式 | 設問の例 |
|---|---|
| 読み取りのみ | 図から読み取れることを述べよ |
| 読み取り+意見 | 図をふまえ、あなたの考えを述べよ |
| 複数資料 | 資料1と資料2を関連づけて論じよ |
複数資料型が最も難しい形式です。2つのデータを別々に説明するだけでは評価されません。関連づけが必要になります。
読み取りの手順【4ステップ】
| 順 | やること | 時間の目安(60分) |
|---|---|---|
| 1 | タイトルと単位を確認 | 2分 |
| 2 | 大きな変化を探す | 5分 |
| 3 | 原因を考える | 8分 |
| 4 | 構成をメモする | 5分 |
| 5 | 書く | 35分 |
| 6 | 見直す | 5分 |
ステップ1:タイトルと単位を確認

最初に必ず確認してください。ここを読み飛ばすと誤読します。
| 確認すること | なぜ |
|---|---|
| タイトル | 何のデータか |
| 単位 | %・人・円・件 |
| 調査年 | いつの数字か |
| 出典 | 誰が調べたか |
| 軸の範囲 | 0から始まっているか |
単位の見落としが最も危険です。「%」を「人」と読み違えると、答案全体が崩れます。
また縦軸が0から始まっていないグラフでは、変化が実際より大きく見えます。注意して読んでください。
ステップ2:大きな変化を探す
すべての数字を説明する必要はありません。目立つ点を3つ選んでください。
| 見るべき点 | 例 |
|---|---|
| 最大と最小 | どこが最も高い・低いか |
| 急な変化 | どこで大きく動いたか |
| 傾向の転換 | 増加から減少に変わった点 |
| 例外 | 全体の傾向と違う動きをする項目 |
| 差が大きい箇所 | 項目間の開き |
最も書きやすいのは「例外」です。全体と違う動きをする項目には理由があり、そこを論じると答案に深みが出ます。
ステップ3:原因を考える
ここが差のつく部分です。
| 問い | 考える方向 |
|---|---|
| なぜ増えたのか | 社会の変化・制度の変更・技術 |
| なぜ減ったのか | 同上 |
| なぜその年なのか | その前後に何があったか |
| なぜ例外があるのか | その項目の特殊事情 |
正解を当てる必要はありません。筋の通った説明ができていれば評価されます。
ただし断定は避けてください。「〜が原因である」ではなく「〜が影響していると考えられる」と書くのが安全です。
ステップ4:構成をメモする
| メモする内容 |
|---|
| 取り上げるデータ(2〜3点) |
| それぞれの解釈 |
| そこから導く自分の意見 |
| 反対の見方への応答 |
書き方の型【4部構成】

| 部 | 内容 | 字数の目安(600字) |
|---|---|---|
| ① 読み取り | データから分かる事実 | 120〜150字 |
| ② 解釈 | なぜそうなっているか | 150〜200字 |
| ③ 意見 | そこから何を考えるか | 200〜250字 |
| ④ まとめ | 結論を一文で | 50〜80字 |
①を書きすぎないことが重要です。数字の説明に字数を使うと、肝心の意見が薄くなります。
目安として読み取りは全体の2割までにとどめてください。
数字の書き方
| 書き方 | 例 |
|---|---|
| 変化を示す | 2010年の30%から2020年の45%へ増加している |
| 比較を示す | A市はB市の約2倍である |
| 順位を示す | 最も高いのはCで、次いでDが続く |
数字はそのまま書き写してください。四捨五入や概算は誤読のもとになります。
ただしすべての数字を並べる必要はありません。論じるのに必要な2〜3点に絞ってください。
解釈で使える表現
| 表現 | 使う場面 |
|---|---|
| 〜が影響していると考えられる | 原因を推測する |
| 〜という背景があるのではないか | 同上 |
| この数値は〜を示している | 意味を述べる |
| 注目すべきは〜である | 焦点を移す |
| 一方で〜という傾向も見られる | 例外に触れる |
「考えられる」「ではないか」を使ってください。断定するとデータにない主張になります。
答案例【600字】
次のような資料が出たと想定します。
例題

(資料の内容)
「1日あたりの読書時間」の調査結果。
10代から60代までの年代別に、平均読書時間を分単位で示している。10代が最も短く1日15分、20代が18分、30代が22分、40代が28分、50代が35分、60代が42分となっている。あわせて、同じ調査の「1日あたりの動画視聴時間」も示されており、10代が最も長く1日120分、年代が上がるほど短くなり、60代は35分である。
答案例
資料から、読書時間と動画視聴時間が逆の傾向を示していることが分かる。読書時間は10代の15分から60代の42分まで、年代が上がるほど長くなる。一方、動画視聴時間は10代の120分が最も長く、年代が上がるほど短くなり、60代では35分にとどまる。
この差は、それぞれの年代が育った情報環境の違いによるものと考えられる。10代は生まれたときから動画が身近にあり、情報を得る手段として動画を選ぶことに慣れている。一方、60代が若い頃には動画を手軽に見る環境がなく、活字から情報を得る習慣が定着したのではないか。
ここで注意すべきは、この数値を「若者の読書離れ」と単純に結論づけてよいかという点である。読書時間が短いことは、情報に触れる時間が短いことを意味しない。10代は動画を含めれば、1日135分を情報摂取に使っている。60代の77分より長い。問題は時間の長さではなく、得られる情報の性質にあるのではないか。
動画は視覚と聴覚に訴えるため理解しやすい一方、受け身になりやすい。読書は自分の速度で読み返せるため、考えながら進められる。両者は代替関係ではなく、役割が異なる。
実際、学校の授業では文章を読んで考える時間が確保されているが、その時間は調査の読書時間に含まれていない可能性がある。数値だけを見て若い世代が考えていないと判断するのは早い。
読書時間の短さを問題とするなら、時間を増やすことより、考えながら読む経験をどう確保するかを問うべきだと考える。
この答案のどこが評価されるか
| 箇所 | 評価される点 |
|---|---|
| 2つのデータを対比した | 複数資料を関連づけている |
| 数字を正確に引用 | 読み取りが正確 |
| 情報環境という原因を示した | 解釈に踏み込んでいる |
| 「読書離れ」を疑った | 安易な結論を避けている |
| 合計時間を計算した | データから新しい数字を出している |
| 時間ではなく性質に論点を移した | 問いの立て直しができている |
3段落目が最も評価される部分です。「読書離れ」という予想される結論をいったん疑い、別の見方を示しています。
複数資料の関連づけ方

資料が2つ以上ある場合、別々に説明しただけでは評価されません。
| 関連づけの型 | 書き方 |
|---|---|
| 対比 | 資料1は増加、資料2は減少している |
| 因果 | 資料1の変化が、資料2の結果につながっている |
| 補完 | 資料1だけでは分からない点が、資料2から見える |
| 矛盾 | 資料1と資料2は一見矛盾する |
最も書きやすいのは対比です。先ほどの答案例も、読書時間と動画視聴時間を対比させています。
「矛盾」を扱えると評価は高くなります。一見食い違う2つのデータを、どう説明するかを論じる形です。
よくある失敗
失敗1:数字を並べただけで終わる
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| 10代は15分、20代は18分、30代は22分、40代は28分、50代は35分、60代は42分である。 | 読書時間は10代の15分から60代の42分まで、年代が上がるほど長くなる。 |
すべての数字を書き写す必要はありません。傾向を一文でまとめ、残った字数を解釈に使ってください。
失敗2:単位を読み違える
答案全体が崩れる最も危険な失敗です。
| 確認すること |
|---|
| %なのか、実数(人・件)なのか |
| 万人なのか、千人なのか |
| 年間なのか、月間なのか、1日あたりなのか |
最初の2分でタイトルと単位を確認してください。
失敗3:原因を断定する
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| この変化はスマートフォンの普及が原因である。 | この変化には、スマートフォンの普及が影響していると考えられる。 |
データは相関を示すだけで、原因を証明しません。断定すると、根拠のない主張になります。
失敗4:資料にない数字を使う
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| 全国平均は約50%と言われている。 | (資料にある数字だけを使う) |
記憶に頼った数字は書かないでください。誤っていれば大きな減点になります。
ただし資料の数字を足したり引いたりするのは問題ありません。むしろ評価されます。
失敗5:資料を別々に説明する
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| 資料1では〜である。資料2では〜である。 | 資料1と資料2は逆の傾向を示している。これは〜という違いによるものと考えられる。 |
複数資料は必ず関連づけてください。並べて説明するだけでは、設問に答えたことになりません。
失敗6:予想される結論に飛びつく
| 直す前 | 直したあと |
|---|---|
| このデータは若者の読書離れを示している。 | この数値を「読書離れ」と単純に結論づけてよいかは検討が必要である。 |
誰でも思いつく結論は、そのまま書いても評価されません。いったん疑ってみると、答案に深みが出ます。
数字の扱い方
使える計算
| 計算 | 例 |
|---|---|
| 差 | 10代と60代では27分の開きがある |
| 倍率 | 約2.8倍である |
| 合計 | 読書と動画を合わせると135分になる |
| 割合 | 全体の約3分の1を占める |
資料の数字から計算して出した数値は、評価されます。データを組み合わせて新しい事実を導く作業だからです。
概数の書き方
| 状況 | 書き方 |
|---|---|
| 正確な数字がある | そのまま書く |
| 計算結果が割り切れない | 「約〜」をつける |
| おおまかに示したい | 「およそ半数」「3分の1程度」 |
電卓は使えません。複雑な計算は避け、概数で示してください。
よくある質問
グラフが読み取れません
3点だけ探してください。
| 探すもの |
|---|
| 最も高いところ |
| 最も低いところ |
| 大きく変わったところ |
この3点が分かれば、読み取りの部分は書けます。すべてを理解する必要はありません。
原因が思いつきません
時期に注目してください。
| 問い | 考える方向 |
|---|---|
| その年に何があったか | 制度の変更・技術の普及・社会の出来事 |
| 誰が関係するか | 年代・地域・職業による違い |
| 何が変わったか | 価値観・生活様式・経済状況 |
正解を当てる必要はありません。筋が通っていれば評価されます。
データに書いていないことを書いてもいいですか
| 書いてよい | 書いてはいけない |
|---|---|
| データから考えた解釈 | 記憶に頼った別の統計 |
| データを計算した数値 | 不確かな事実 |
| 自分の経験や見聞 | 断定的な原因の特定 |
解釈は自由ですが、事実は資料の範囲内にとどめてください。
意見が思いつきません
「この数値をどう受け止めるべきか」を考えてください。
| 問いの立て方 |
|---|
| これは問題なのか、そうでないのか |
| この傾向は続くべきか、変えるべきか |
| 誰にとっての問題なのか |
| 数値だけで判断してよいのか |
4つ目が使いやすい問いです。数値の限界を指摘すると、論が立ちやすくなります。
計算を間違えたらどうなりますか
大きな減点になります。
複雑な計算は避け、差や倍率など簡単なものにとどめてください。自信がなければ計算せず、傾向だけを述べても構いません。
他の形式とどう違いますか
| 形式 | 材料 | 必要な力 |
|---|---|---|
| データ型 | グラフ・表 | 読み取りと解釈 |
| 課題文型 | 文章 | 読解と要約 |
| テーマ型 | 題のみ | 背景知識 |
データ型は知識が少なくても書ける形式です。材料が資料にあるためです。
ただし読み間違えると全体が崩れるという危険があります。最初の確認を丁寧に行ってください。
どの学部で出ますか
| 学部系統 | 出題の傾向 |
|---|---|
| 経済・経営 | 統計や経済指標 |
| 社会・国際 | 人口・世論調査 |
| 医療・看護 | 疾病・高齢化の統計 |
| 教育 | 学力調査・意識調査 |
社会科学系で出題が多い形式です。志望学部の過去問を必ず確認してください。
次にやること
まず志望校の過去問で形式を確認してください。データ型が出るかどうかで対策が変わります。
データ型が出る場合は、新聞や統計サイトのグラフを見る習慣をつけてください。実際に書かなくても、「なぜこうなっているか」を考えるだけで力がつきます。
書き方の型やテンプレートをまとめた記事、課題文型の解き方をまとめた記事もあります。あわせて確認してください。
総合型選抜を受ける場合は、志望理由書の準備も並行して進めてください。





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