法学部に向いているかどうかは、性格ではなく「何をする学部か」を知っているかで決まります。この記事では、実際に法学部で何をするのかを具体的に示したうえで、向き・不向きを判断できるようにします。
「論理的思考ができる人」「コツコツ努力できる人」といった説明をよく見ますが、それだけでは判断できません。どの学部にも当てはまるからです。
結論:向き不向きを分けるのはこの3つ

| 向いている | 向いていない | |
|---|---|---|
| 答えのなさ | 正解が1つに決まらないことを面白いと感じる | はっきりした答えがないと落ち着かない |
| 文章の量 | 長い文章を読むのが苦にならない | 読書やレポートが苦痛 |
| 試験の形式 | 期末一発勝負でも計画的に準備できる | 毎回の小テストがないと勉強しない |
この3つ以外は、入ってから身につきます。正義感の強さや社会問題への関心は、あるに越したことはありませんが、必須ではありません。
以下、それぞれを具体的に説明します。
法学部で実際に何をするのか

向き不向きを考える前に、何をする学部なのかを知る必要があります。イメージと実際が最も食い違う学部だからです。
1年生:ひたすら用語を覚える
最初の1年は、法律の議論に入る前の言葉を覚える期間です。
「善意」「悪意」「瑕疵」「対抗要件」といった言葉が出てきますが、日常の意味とは違います。法律で「善意」とは、ある事実を知らないことです。親切という意味ではありません。
この段階で「思っていたのと違う」と感じる人が一定数います。テレビドラマで見る法廷の場面は、まだ先の話です。
2〜3年生:判例を読む
専門科目に入ると、判例を読む量が一気に増えます。判例とは、過去の裁判で裁判所が示した判断のことです。
1つの判例が数ページから数十ページあり、これを毎週いくつも読みます。しかも文章が独特で、慣れるまで意味が取れません。
ここが最初の関門です。長い文章を読むことに抵抗がある人は、この時点でつらくなります。
ゼミ:議論する
3年生以降のゼミでは、具体的な事例について議論します。「この場合、AとBのどちらの主張が通るか」という形です。
ここで大事なのは、自分の意見を言うことではなく、条文と判例を根拠に説明することです。「かわいそうだから」では通りません。
向いている人の特徴

答えが1つに決まらないことを楽しめる
法律の問題には、多くの場合複数の考え方があります。学説が対立していて、どちらが正しいとも言えない論点が山ほどあります。
数学のように答えが1つに決まる感覚を求めていると、苦しくなります。逆に「なぜ意見が分かれるのか」を考えるのが面白い人には向いています。
試験でも、結論そのものよりそこに至る筋道が評価されます。結論が違っても、根拠が示せていれば点になります。
長い文章を読むのが苦にならない
法学部は、大学の中でも読む量が多い学部です。教科書、条文、判例、学説。どれも短くありません。
速く読める必要はありません。正確に読めることのほうが大事です。「AでなければBとする」といった条件を、一つずつ確認しながら読む作業に耐えられるかどうかです。
細かい違いにこだわれる
法律では、言葉の一字の違いが結論を変えます。「または」と「および」、「することができる」と「しなければならない」。これらは明確に区別されます。
この細かさを面倒だと感じるか、面白いと感じるかが、向き不向きの分かれ目になります。
計画的に準備できる
法学部の多くの科目は、期末試験だけで成績が決まります。出席点も小テストもありません。
裏を返せば、試験前まで何もしなくても怒られません。ここで自分を管理できるかどうかが、成績を大きく分けます。
向いていない人の特徴

暗記だけで乗り切ろうとする
法学部は暗記科目だと思われがちですが、暗記だけでは点が取れません。
試験では、見たことのない事例が出ます。覚えた知識を、その事例にどう使うかが問われます。条文を丸暗記していても、使い方が分からなければ書けません。
すぐに役立つことを学びたい
法学部で学ぶことの多くは、すぐには役に立ちません。民法の債権総論を学んでも、明日の生活は変わりません。
実務で使えるようになるのは、資格試験の勉強を始めてからか、就職してからです。「学んだことをすぐ活かしたい」という人には、物足りなく感じられます。
文章を書くのが極端に苦手
試験もレポートも、ほぼすべて記述式です。選択問題はほとんどありません。
うまい文章である必要はありませんが、順序立てて説明する文章は書けないと厳しくなります。ただし、これは訓練で改善します。入学時点で書けなくても構いません。
入ってから気づいたこと
ここからは、法学部を卒業して法科大学院に進んだ立場から、入学前には分からなかったことを書きます。
「向いていない」と感じても、やめる必要はない
入学して半年ほどで、多くの人が一度は「向いていないかもしれない」と感じます。用語が分からず、判例が読めず、授業についていけないからです。
ただし、これはほぼ全員が通る道です。最初から判例がすらすら読める人はいません。読み慣れるまでに、早い人で半年、遅い人で2年かかります。
この時期のつらさを「向き不向き」だと判断しないほうがよいと思います。慣れの問題である場合が多いからです。
成績は「才能」より「続けたか」で決まる
法律の勉強は、積み上げが効きます。民法を理解していないと商法が分からず、刑法総論が分からないと各論でつまずきます。
逆に言えば、順番どおりに積み上げれば、誰でもある程度までは行けます。特別な才能を必要とする場面は、学部の段階ではほとんどありません。
差がつくのは、分からないところを放置せずに戻れるかどうかです。分からないまま先へ進むと、必ずどこかで止まります。
法学部の進路
「法学部=弁護士」というイメージがありますが、実際に法曹になるのはごく一部です。
| 進路 | おおよその割合 | 備考 |
|---|---|---|
| 民間企業 | 最も多い | 金融・商社・メーカーなど。学部を問わない就職 |
| 公務員 | 次に多い | 国家・地方。法律科目が試験に出るため有利 |
| 法科大学院 | 少数 | 法曹を目指す場合 |
| その他の資格 | 少数 | 司法書士・行政書士・社労士など |
法曹を目指さなくても、法学部を選ぶ意味はあります。公務員試験では法律科目の配点が大きく、民間就職でも不利にはなりません。
公務員を目指すなら相性がよい
国家公務員・地方公務員の試験には、憲法・民法・行政法が出ます。法学部の授業がそのまま対策になるため、他学部より負担が軽くなります。
公務員志望であれば、法学部は有力な選択肢です。
民間就職で不利になることはない
法学部だから就職に強い、ということはありません。ただし不利にもなりません。文系の就職では、学部より個人の経験が見られます。
「法学部だと理屈っぽいと思われる」という話も聞きますが、実際に影響することはほとんどないと思います。

迷っているときの判断材料

試しに条文を読んでみる
いちばん確実なのは、実際に法律の文章を読んでみることです。
民法の条文はインターネットで無料で読めます。「e-Gov法令検索」で民法を開き、最初の数十条を読んでみてください。
読んでいて苦痛でなければ、おそらく大丈夫です。1ページも読めないようなら、他の学部を検討したほうがよいかもしれません。
裁判の傍聴に行ってみる
裁判は誰でも無料で傍聴できます。予約も不要で、身分証も要りません。
地方裁判所に行けば、その日の開廷表が貼ってあります。実際の法廷を見ると、イメージとの差がよく分かります。想像より地味だと感じる人が多いはずです。
大学の講義を見てみる
オープンキャンパスの模擬授業や、大学が公開している講義動画を見るのも有効です。
「面白そう」と思えるかどうかより、90分聞いていられるかで判断してください。実際の授業はこれが週に何コマも続きます。

よくある質問

正義感が強くないと向いていませんか
そんなことはありません。むしろ強すぎると苦しくなる場面があります。
法律は、感情的に納得できない結論も導きます。それを「そういう仕組みだ」と受け止められるほうが、勉強は進みます。
数学が苦手でも大丈夫ですか
問題ありません。法学部で計算をすることはほとんどありません。
ただし、条件を整理して考える力は必要です。数学の計算は苦手でも、証明問題の考え方が嫌いでなければ向いています。
暗記が得意なほうが有利ですか
有利ではありますが、決定的ではありません。前述のとおり、試験で問われるのは知識の使い方だからです。
暗記が得意でも使い方が分からなければ書けませんし、暗記が苦手でも仕組みを理解していれば書けます。
弁護士にならないなら意味がないですか
そんなことはありません。法学部の卒業生の大半は法曹になりません。
契約の仕組みや権利義務の考え方は、どの仕事でも使います。身の回りのトラブルに対処できるようになるという実利もあります。
途中で合わないと分かったらどうすればいいですか
転部・転学部の制度がある大学もありますし、そのまま卒業して別の道に進む人も多くいます。
法学部を出たからといって、法律の仕事に就く義務はありません。4年間で得た読解力と論述力は、他の場所でも使えます。




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