突然ですが、皆さんは法学部と聞くとどのようなイメージを持たれていますか?
おそらくこのように答える人が多いと思います。
- 将来弁護士や裁判官など法曹関係に就きたい人が行くところ
- 勉強熱心で真面目な人が行くところ
- 六法全書を暗記しなきゃいけない
- 不真面目な人が少ない
- 「お堅い」職業に就く人が多い
- 毎日勉強付けで忙しい 等々
実際法学部を卒業した身からお話しさせていただくとこのようなイメージは半分合ってて半分誤解されているところが多いように感じております。
例えば、法学部に行ったからと言って多くの方が法曹関係(弁護士や検察官、裁判官等)になるわけではなく、むしろ民間企業や公務員に就職する割合の方が高い傾向にあります。その他にも、後述するように六法は必需品とはいえ、それを試験のために暗記するまで覚える必要はないです。
そこで今回は、法学部に入って学べること、そして法学部に向いている人・向いていない人の特徴についてご紹介します。
法学部で学ぶこと・授業内容
法学部と一括りに言っても多くの大学では、いくつかの学科に分かれていることが多いです。
例えば、慶應義塾大学では政治学科と法律学科に分かれています。他にも中央大学では法律学科、政治学科の他に国際企業関係法学科に分かれております。
また、それぞれの学科によっても学ぶ内容が違うことが多いので必ずしも法学部に行ったからと言って法律ばかりを勉強するとは限らないことに注意してください。
とはいえ、法学部の多くは1年次の必修科目として憲法や民法などの法律基礎科目を履修する傾向があるので、ほとんどの法学部の方は一度は法律科目を履修するでしょう。
- 法律学科で学ぶこと・・・
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憲法・民法・刑法をはじめとした法律を判例や解釈から読み解きどのように社計生活において適用するのかを学ぶ
- 政治学科で学ぶこと・・・
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現在の日本社会や国際社会で生じている現象を分析し検討する
一度自分の志望校の大学の法学部にどのような学科があるのかを調べてみましょう!
授業内容
授業内容について、法律学科を例にどのようなことを学ぶのか学年別にご紹介します。
民法(総則・物権・債権) 憲法(人権) 刑法総論 法学入門 その他実技や教養科目・外国語科目
民法(物権・債権・家族法)憲法(統治) 刑法各論 その他実技や教養科目・外国語科目
行政法 会社法(商法) 民事訴訟法 刑事訴訟法 実務科目 ゼミなど
民事執行法 刑事政策などの基礎科目以外の法律分野など ゼミなど
1年次、2年次
1年次2年次では、法律の基本科目である憲法、民法、刑法を主に学びます。これらの法律は一度は聞いたことがあるというかたも多いのではないでしょうか。
よく言われる「六法」の中で憲法、民法、刑法はまとめて「上三法」と言われることが多いです。刑法などは比較的「得意、学んでて楽しい。」と言う方が多い中、民法は「難しい。」と答える学生が私の周りでも多かったです。
一番最初に民法の総則を学び、そこでつまづく学生が多いですが、ここで諦めないでください!法律を勉強するにあたっては、その事例が身近なことに置き換えられるのではないかと考えてみると深く理解することができるようになります。
憲法、民法、刑法は1年次に学ぶのはこれらの法律がこれから3年、4年次に学ぶ法律科目の思考の礎になるからです。特に、民法から得られる法律の考え方は様々な法律科目に通用するものです。是非法学部に入ったら民法に重点を置いた勉強法を心がけて頂ければと思います。
また、英語やその他の外国語科目、教養科目も履修することになると思いますが、これらの科目は法律科目と同様これまで高校生まで味わったことのないような深い勉強ができるので、とても充実した学習ができる良い機会になると思います。是非自分の学びたかったことを思う存分学習して、より良い大学生活を送っていただければと思います。
3年次、4年次
3年次からは、会社法や訴訟科目など法律応用科目と呼ばれる法律科目を履修することになります。1年から2年次までに前述した「上三法」をしっかりと勉強した方であればこれらの勉強に苦を感じる方はあまりいないかもしれません。特に、会社法は条文こそ多いものの基本的な考え方は民法と大きく変わることがないので個人的には一番おススメの科目です。
とはいえ、行政法や訴訟科目、特に民事訴訟法は多くの方が苦手意識あるいは難解だと感じる方が多いように見受けられます。後述しますが、このような難しい科目とぶつかった際には大学の授業の勉強と並行して一度時間を割いて「基本書」を使った勉強をしてみることをおススメします。きっとわからなかったことは基本書を調べれば答えは見つかります。それでもわからなかった場合は、教授に直接質問するのもよいかもしれません。
また、3年からはゼミも始まります。
これまで1,2年次に履修した科目から一番楽しかったと思う科目を選んで教授のゼミを選ぶのもよいですが、これから先のことも考え自分が将来どのようなことを仕事にしていきたいか、そしてその仕事ではどのようなことを取り扱うのかということを念頭においてゼミ選びをするとよいゼミと出会えると思います。
特に、ゼミではどのようなことを学ぶのかシラバスなどが配られていてもそれだけでは十分にはわからないので、直接ゼミを見学できる機会があればそのようなチャンスを積極的に利用してみましょう。
法律・法学部に入学する前の入門書のおススメはこれ!
法学部ではどのようなことを学ぶのかを以下の法学入門を読むと大まかにわかると思います。是非法学部に興味を抱いた方は読んでみてください!現役の法学部の教授が書いている本ですので、大学で学ぶことが本を通して追体験できます!
法律を学ぶことは難しい?
結論から言うと、法律を学び、習得することは決して容易なことではありません。それは、司法試験や予備試験などの法律を扱う国家試験が難関資格とされていることからも明らかでしょう。
しかし、法律を学ぶことで社会に対する物の見方が大きく変わり、視野をさらに広げることができることは間違えありません。
法律は一見難しそうに見えますが、法律という物差しを通して日常生活に関することを検討してみると新たな発見に気づかされることが多くなります。
特に、刑法を学ぶとニュースで取り扱われる事件について違った角度で見ることができ、その事件について深く検討することができるようになります。
法律は日常生活と密接な関わり合いを持っているので学ぶことは大きな意義を有しておりますし、これからの社会生活で大きく役に立つでしょう。
法学部にまつわるよくあるイメージと実際に入ってわかったこと Q&Aで回答!
法学部については、真面目や試験が大変などのイメージを持つ方がよく見受けられますが、よくあるイメージについて筆者が実際に法学部に入ってわかったことを以下でQ&A方式で回答していきたいと思います。
法学部についてさらに知りたい人はこちら!
法学部生の学校生活
法学部生の学生生活は多種多様です。
一例を挙げると・・・
- アルバイト活動に打ちこむ学生
- サークル活動や部活動に参加して自分の趣味やこれまで出来なかったことにチャレンジする学生
- 司法試験(予備試験)や国家試験合格のために日々勉強する学生
- インターン活動を早めにする学生
- 在学中から起業をする学生 等
全体の割合から考えると、多くの学生は学校の授業と両立しつつアルバイトやサークル活動などをして学生生活を過ごしている傾向があります。
もちろん、授業の復習をすることは大切ですが、決して法学部だからと言って常日頃から他の活動ができないほどに勉強に追われているということはありません。
むしろ、テスト直前期まであまりがっつり勉強をしないという学生の方が多いような気がします。
ただ、その中でも自分の将来の職業が明確に決まっている人は早めの段階から資格合格のための勉強をする方がいることは事実です。
これは、自分が今後どのような仕事に就きたいのかで変わってくるので千差万別です。
つまり、他の学部と大きく異なることはなく、勉強する人もいれば勉強以外のことにも大学生活を充てているという両者がいるので、学校に入ってから自身に合う生活スタイルを選べばよいと思います。
法学部生がよく使うもの
法学部生が授業でよく使用するものは、
- 六法 ポケット六法や判例六法など
- 判例百選(有斐閣)
- 基本書、択一六法など
が挙げられます。
六法は、必ず授業で何らかの条文に関するテーマを扱うので必須と言えるでしょう。
判例百選とは、それぞれの法律科目ごとに出版されているこれまでの裁判所において判決が下された重要な事例についてまとめた本です。授業では六法のみならずそのテーマに関する判例を百選を使って学習することが多いのでこちらも多くの学生が持っています。
他にも、授業で扱う科目について詳細に書かれている教科書(「基本書」と呼ばれています)や一つの条文について詳しく書かれた択一六法を持ち運んでいる学生も多くいます。
法学部のテストは難しい?
法学部の傾向として、授業の出席はとることが少ない一方で、テストに比重を充てて成績を評価することが多いです。つまり、テストの点数でほとんど学校の成績が決まります。
そのため、テストは非常に重要です。また、法学部のテストは論述形式であることが多いのでそのための対策をする必要があります。以下に、よくある質問について簡潔にまとめてみましたので気になる方は参考にしてみてください。
よくある法学部のテストに関するQ&A
- テストでは条文を暗記しなければいけないの?
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授業で扱った条文は必要最低限覚えておいた方がテスト時間の効率を上げるためにも好ましいですが、それ以外の条文については覚える必要はないです。むしろ、テストでは六法を参照することが可能なことが多いので、試験の最中に知らない条文は調べればよいでしょう。
- テストはどんな形式で問われる?
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多くの学校では論述形式で問われることが多いです。1時間半の試験時間であれば白紙の論述答案用紙に4枚ほどに渡って一から自分の答案を書くこととなります。選択問題(択一問題)形式で問われることもありますが、論述形式の問題と一緒に出題されることが多いので論述対策は欠かせないです。
- 答案に書き方はある?
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あります。問題提起→規範定立→当てはめといういわゆる「法的三段論法」と言う書き方が好ましいとされています。具体的な書き方は長くなるのでここでは控えますが、詳しくは以下の本の巻頭で紹介されていますので是非一読してみてください。
ポチップ - 学校で答案の書き方は教授から教わる?
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学校で教授から答案の書き方について教わることはないと思います。少なくとも自分は学校で詳細には教わりませんでしたし、他の学校でも同じようです。答案の書き方は暗黙の了解のようなところがあり、学校側から教わらずその代わりに学校の先輩などから教えてもらうことが多いです。書き方については別記事でご紹介しますので是非そちらを参考にしてみてください。
- 試験中は六法は使える?
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使える科目もあれば一切参照不可と言う科目もあります。民法や刑法は基本的に参考にすることはできます。ただ、参照できなくても教授があらかじめ問題に答案で書く条文を引用してくれていることが多いのでその点は心配ないです。
- 授業の出席点は考慮される?
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法学部の特徴として出席点は考慮されない傾向が強いです。つまり、出席は自由であるものの、テストの点数で全てを評価するということです。そのため、普段から授業に出ないとテスト直前に自分を苦しめることになるので、毎授業欠かさず出席することを心がけましょう。
- 答案用紙は何で書けばよい?シャープペンシルを使ってもいい?
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法律科目に共通する事項として、試験ではボールペンあるいは万年筆など消せない筆記用具で書かなければなりません。したがって、シャープペンシルなど消せる筆記用具は使えません。
法学部の就職先は?
法学部の就職先は大きく3つに分かれている傾向があります。
- 民間企業へ就職
- 公務員に就職
- 法曹三者を目指すために法科大学院へ進学
割合としては、民間企業への就職が一番多く、その次に地方公務員や国家公務員への就職、そして大学院への進学という順に続いています。
意外にも、法学部出身の方は法曹を目指す人が少なく、むしろ民間企業への就職が多いという事実に驚かれる方が多いかもしれません。
民間企業ですと、例えば金融関係や商社、コンサルタントなど法律という枠組みに縛られず幅広い分野で活躍されている方が多いので、法学部に入ったからと言って必ずしも法律関係に就職しなければいけないと考える必要はありません。
いろんな職種を大学生の間にインターンなどに参加して、自分に合った職業を探しましょう!
大学院への進学事情について
ただ、法学部に入ったからには弁護士や検察官など法曹関係の職業を目指したいという方も多いです。
そのような方は、以下の2つのルートのいずれかで法曹三者を目指すことになります。
- 在学中に司法試験予備試験を合格して、翌年に司法試験を受けて合格する。
- 法科大学院に進学して卒業後に司法試験を受けて合格する。
多くの方は法科大学院ルートで司法試験合格を目指すこととなりますが、まずは在学中に予備試験合格を目指すことを第一に考えるとよいでしょう。
法学部の中でも法科大学院へ進学するという人は少ないので、周りに同じ志を持った方がいないということもあり得ます。したがって、自分が法曹を目指すという志が強ければまずは同じ目標を持った友達を一人でもよいので探して一緒に勉強することをおススメします。
資格試験合格には同じ目標を持った人が身近にいることが何よりも精神的な安心材料にもなります!そのような人を一人でも見つけて合格を掴み取りましょう!
法学部で得られるもの
法律を学ぶことで得られるものは、以下の事項が一例として挙げられます。
- 論理的な思考力が付く(リーガルマインド)
- 相手を説得する能力が身に付く
- 近時のニュースをより深く観察する洞察力が身に付く
- 物事の本質を見抜くことができる
- 問題解決力が身に付く
- 対立する意見に対して中立的な物事の捉え方をすることができる(バランス感覚的思考力が身に付く)
- 長い文章から重要な事実を見抜く国語力、要約力が身に付く
- 日常生活にまつわる様々な法的な問題に対処することができる
- 会社においても法的思考力を活かせる 等
法律はビジネスや事業を行う際には切り離すことのできないものです。いかなるビジネスも法律によって規律されているため、法律に逸脱するようなことは行えません。
したがって、日常生活のみならず会社における大事業まで幅広い分野で必要になるのが法律です。
このような意味では他の文系学部に比べると普段生活する中で最も身近な学問であるということができると思います。たしかに、法律は一見すると難しくなかなかとっかかりづらい学問だとは思います。
しかし、それぞれの法律の本質を理解できるようになるとむしろ法律を学ぶことが楽しくなります。また、これだけではなく法律を学ぶと様々な事象に対して論理的な思考力を身に付けることができるので、実務でもこの能力は高く評価されます。
法学部をオススメする人
法学部をオススメする人はこのような人だと考えております。
法学部をオススメする人(向いている人)
- 大学を卒業した先でも役立つ能力を培いたい人
- 様々な分野に興味を抱ける人
- 社会の出来事に広く関心のある人
- 一つ一つを丁寧に分析できる人
- 説得的に相手に説明する能力を身に付けたい人
- 正義感のある人
- 弁護士や、検察官、裁判官など将来法律関係に就きたい人
- 様々な分野に対してアプローチできる問題解決能力を身に付けたい人
- 文章を書くことが得意な人
- 本を読むことが得意な人
- 法律に少しでも興味関心がある人
法律を学ぶことで様々なメリットがあることは前述しましたが、法律に少しでも関心がある人はもちろんのこと、法律に関心がなくとも、説得的に相手に説明できる能力を身に付けたい人や文章を書くことに苦を感じない人、あらゆる分野に興味を抱ける知的好奇心のある人はかなり法学部の勉強に向いていると思います。
また、将来法曹関係や法律関係に就職したいという明確な目標があるのなら法学部に入るべきということは言うまでもありません。
法律の勉強では比較的長めの判例を読むことになるので、日頃から本を読むことが好きな人は特にオススメです!
法学部をオススメしない人
法学部をオススメしない人(向いていない人)
- 文章を書くことが苦手な人
- 多くの文章を読むことに抵抗感のある人
- 授業の内容の復習を毎回コツコツと取り組めない人
- 大学に入ったら勉強を一切したくない人
- 法律以外の分野に強く関心がある人
授業では、判例を通した学習が必須となるため、まずは比較的長めの文章でも抵抗感なく読みこなせることが必要となります。
とはいえ、文章を読むことが苦手であっても大学入学してからは時間にもこれまで以上に余裕が出てくるので、この能力を鍛えたいという根気があれば十分克服できるのでその点は大きな問題ではないです。
ただ、法学部のテストではA3の答案用紙に自身の考える法律構成について4ページ近くにわたって与えられた問いに対して論述することになりますので、自分の頭で考えて文章を書くことに苦を感じる人はあまり向いていないかもしれません。
また、大学に入ってから全く勉強をせずひたすら遊びたいと考えている人はあまり法学部に向いてはいないと思います。法学部に限らず、他の学部でも大学で単位を取得するにはテストやレポートの提出は必要になるのでこの点は同じです。
高校までの勉強から自分が法学部に向いているかを判断するポイント
法学部に入る前に、自分が向いているかどうかを判断する上での考慮事項として高校生までの勉強に対する考え方がよい判断材料となります。そこで、ここではこれまでの勉強からどのような人が向いているのかご紹介します。
あくまで一例ですので、必ずしもこれらの1つに当てはまるからと言って向いていないとは限りません。
ただ、法学部ではテストに加えてレポート課題なども授業課題として与えられることがあるので、その様な課題を着実にこなせない人、あるいは提出期限を守れない人はあまり法学部に向いていないかもしれません。
まとめ
ここまでお読みいただきありがとうございます。
法学部は一見入ってから大変そうなイメージがありますが、実際に入ってみて感じたのはイメージとは裏腹に楽しいことも多く他の学部と遜色なく自分の趣味と両立していけるところです。
たしかに、勉強は大変という一面はありますが、法律という勉強を通して今まで以上に多角的に物事を判断することができますし、日常生活でも学んだことを大いに役立てられるということも大きな強みなのではないかと思います。
私自身法学部に入って非常に良かったと感じていますし、法学部に入ったことで現在のような法曹関係の仕事に就きたいと強く感じることができましたので、自分の目標とする将来を見つけることができたという面では感謝しかありません。
法学部で学んだことは法曹志望に限らず多くの学生にとって学んでいて将来役に立てられるものですので、この記事を機に少しでも法学部に興味を抱いていただければ幸いです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。他の記事も是非読んでみてください!
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